アメリカのiPhoneには技適マークはついてますか？

アメリカのiPhoneには技適マークがついていません。これは、単にマークがないというだけでなく、その背景には日本とアメリカにおける電波法や認証制度の大きな違い、そしてグローバル展開におけるアップルの戦略が複雑に絡み合っているためです。表面的な「マークがない」という事実の裏側にある、より深い理解が必要でしょう。

まず、技適マークは「技術基準適合証明」の略称で、総務省が定めた日本の無線設備に関する技術基準に適合していることを示すものです。日本の電波法では、無線機器を日本で販売・使用するには、この技適マークの取得が義務付けられています。これは、電波障害の発生を防ぎ、電波利用の秩序を維持するための重要な制度です。

一方、アメリカには日本の技適マークのような、単一の統一された認証マークはありません。アメリカ連邦通信委員会 (FCC) が無線機器の認証を行っていますが、これは技適マークとは性質が異なります。FCC認証は、機器がFCCの技術基準に適合していることを証明するものであり、日本の技適マークのように、必ずしも目に見えるマークを機器に貼付する必要はありません。多くの場合、FCC IDという識別番号が機器に記載されていますが、これは日本の技適マークのような視覚的な認証マークとは役割が異なります。

では、なぜアメリカのiPhoneには技適マークがないのでしょうか？ その理由は、大きく分けて２つの要因が考えられます。

一つ目は、前述のように、日本とアメリカの無線規格の違いです。周波数帯域や出力、その他の技術仕様が異なるため、日本で販売されるiPhoneとアメリカで販売されるiPhoneでは、モデル番号自体が異なっています。日本の技適マークを取得するには、日本の規格に適合したモデルを認証を受ける必要があります。アメリカのモデルをそのまま日本で使用することは、電波法違反となりかねません。そのため、日本向けに販売されるiPhoneは、日本の規格に適合するように設計・製造され、技適マークを取得しています。

二つ目は、アップルのグローバル戦略です。アップルは世界各国でiPhoneを販売していますが、それぞれの国の規制や規格に適合したモデルを供給することで、効率的なグローバル展開を実現しています。各国で個別の認証を取得することはコストと時間の面で非常に負担が大きいため、各国向けに最適化されたモデルを用意する方が、ビジネスとしては合理的です。アメリカで販売されるiPhoneはアメリカの規格に適合しており、アメリカ市場での販売を前提として設計されているため、日本の技適マークを取得する必要性がないのです。

つまり、アメリカのiPhoneに技適マークがないのは、単に「マークが貼られていない」というだけではありません。それは、日本とアメリカの電波法の違い、そしてアップルのグローバルな製品戦略という、複数の要素が複雑に絡み合った結果なのです。日本の電波法を遵守するためには、日本向けに販売されるiPhoneは日本の規格に適合し、技適マークを取得する必要があります。一方、アメリカのiPhoneはアメリカの規格に適合しており、アメリカ国内での使用を前提として設計されているため、日本の技適マークは必要ありません。 この違いを理解することで、アメリカのiPhoneと日本のiPhoneの違いが、より明確に理解できるでしょう。