地下鉄は何で走っていますか?

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地下鉄は地上を走る電車とは異なり、屋根にパンタグラフがなく、架線から電気を得ることはできません。代わりに、線路の両側に設置された「第三軌条」と呼ばれるレールから電気を供給される「第三軌条方式」を採用しています。
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地下鉄は、私たちの都市生活に欠かせない存在です。地上を走る電車とは異なる運行システムを持つ地下鉄は、一体どのような仕組みで動いているのでしょうか?その動力源、そしてその安全性を支える技術について掘り下げて見ていきましょう。

地上を走る電車の多くは、パンタグラフと呼ばれる集電装置を用いて架線から電力を供給されています。しかし、地下鉄はトンネル内を走行するため、架線を設置することが困難です。そのため、地下鉄では主に「第三軌条方式」と呼ばれる方法で電力を供給しています。これは、線路の横、通常は線路とプラットフォームの間、あるいは線路の外側に設置されたレール(第三軌条)から電力を供給する方式です。

第三軌条は、通常、鋼鉄製のレールで、直流電流(DC)が流されています。電車の車体下部には、この第三軌条に接触する集電靴(シュー)と呼ばれる装置が設置されており、そこから電力を供給を受けます。集電靴は、第三軌条と常に安定した接触を維持することで、スムーズな電力供給を確保しています。

第三軌条方式のメリットは、架線に比べて設置が比較的容易で、トンネル内の空間を有効活用できる点です。また、架線に比べてメンテナンスが容易であることも大きな利点です。しかし、デメリットも存在します。最大の懸念点は安全面です。第三軌条には高電圧が流れているため、誤って接触すると感電事故につながる危険性があります。そのため、第三軌条はプラットフォームや通路から完全に遮断され、安全対策が厳重に施されています。 プラットフォームと第三軌条の間には、高い遮蔽壁や柵が設置され、不注意による接触を防止しています。さらに、定期的な点検や保守によって、設備の老朽化や破損による事故のリスクを最小限に抑えています。

また、第三軌条方式は、電圧や電流の制御が比較的容易なため、電車の加減速制御の精度を高めることができます。これは、特に地下鉄のように頻繁な停車と発車を行う路線においては、スムーズな運行に大きく貢献しています。

さらに、近年の地下鉄では、第三軌条方式に加えて、架線方式を採用している路線も存在します。これは、トンネル構造や路線状況に応じて最適な方式を選択しているためです。例えば、比較的浅いトンネルや地上区間では、架線方式を採用することで、第三軌条方式に比べて建設コストを削減できる可能性があります。

しかし、いずれの方式においても、安全性は最優先事項です。定期的な保守点検はもちろんのこと、非常時における迅速な対応体制の整備も、安全な運行を確保するために不可欠です。地下鉄の安全性を支える技術は、目に見えないところで着実に進化を続けており、私たちが安心して利用できる環境を提供し続けています。

最後に、第三軌条方式以外の電力供給方法として、蓄電池式や燃料電池式なども研究開発されています。これらの技術は、環境問題への配慮や、より効率的な運行システムの構築を目指して進められており、将来の地下鉄の在り方を変える可能性を秘めています。 これらの革新的な技術が、より安全で快適な地下鉄の未来を創造する鍵となるでしょう。