VORとTACANの違いは?

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VORはVHF帯を用いた方位測定システムで、主に民航機が方位を知るために使用されます。一方、TACANはUHF帯を使用し、VORと同様に方位に加え、距離情報も提供します。両システムは方位測定の基本原理は同じですが、使用する周波数帯の違いが、性能や用途に影響を与えています。TACANは軍事用途でも広く用いられています。

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VOR と TACAN:航空無線航法システム、その違いを徹底解説

航空機の安全な航行を支える無線航法システムは、日々進化を遂げています。その中でも、VOR (VHF Omnidirectional Range) と TACAN (Tactical Air Navigation) は、現代航空航法の基礎をなす重要なシステムです。一見似たようなこの2つのシステムですが、その構造、機能、そして用途には明確な違いが存在します。本記事では、VOR と TACAN の違いを掘り下げ、それぞれの特徴を詳しく解説します。

VOR (VHF Omnidirectional Range): 民間航空の羅針盤

VOR は、VHF (Very High Frequency) 帯の電波を利用して航空機に方位情報を提供するシステムです。地上局から全方位に電波を発信し、航空機は受信した電波の位相差から、自機と地上局を結ぶ方位 (ラジアル) を知ることができます。

  • 特徴:
    • 周波数帯: VHF 帯 (108.0 MHz – 117.95 MHz)
    • 提供情報: 方位 (ラジアル) のみ
    • 精度: 比較的高い精度で方位情報を提供
    • 用途: 主に民間航空機が航路を設定したり、空港への進入経路を決定したりする際に使用
    • 構造: 地上局は比較的シンプルな構造で、維持コストも比較的低い

TACAN (Tactical Air Navigation): 軍事航空の多機能航法

TACAN は、UHF (Ultra High Frequency) 帯の電波を利用して航空機に方位と距離の情報を提供するシステムです。VOR と同様に地上局から全方位に電波を発信しますが、距離情報を得るために、複雑な信号処理技術が用いられています。

  • 特徴:
    • 周波数帯: UHF 帯 (962 MHz – 1213 MHz)
    • 提供情報: 方位 (ラジアル) と距離 (DME: Distance Measuring Equipment)
    • 精度: 方位情報に加え、距離情報も提供するため、より高度な航法が可能
    • 用途: 主に軍用機が、戦術的な状況下で航路を設定したり、目標地点への精密な進入を行ったりする際に使用。民間航空機も DME 機能を利用可能
    • 構造: 地上局は複雑な構造で、維持コストも比較的高い

VOR と TACAN の主な違い:表で比較

特徴 VOR (VHF Omnidirectional Range) TACAN (Tactical Air Navigation)
周波数帯 VHF (108.0 MHz – 117.95 MHz) UHF (962 MHz – 1213 MHz)
提供情報 方位 (ラジアル) 方位 (ラジアル) + 距離 (DME)
主な用途 民間航空 軍事航空 (民間航空もDME利用可能)
構造 比較的シンプル 複雑
維持コスト 比較的低い 比較的高い

なぜ VOR と TACAN が存在するのか?

VOR は比較的シンプルな構造で、精度も高く、維持コストも低いことから、民間航空の航法システムとして広く普及しました。一方、TACAN は距離情報も提供できるため、より高度な航法を必要とする軍事航空において重要な役割を果たしています。また、UHF 帯は VHF 帯に比べて電波の直進性が高く、地形の影響を受けにくいという利点もあります。

近年では、GPS などの衛星航法システムが普及していますが、VOR と TACAN は電波障害やシステム故障時のバックアップシステムとして、依然として重要な役割を担っています。航空機の安全な航行を支えるために、これらの無線航法システムは今後も進化を続け、その重要性は変わることはないでしょう。

まとめ

VOR と TACAN は、それぞれ異なる周波数帯を使用し、提供する情報、用途、構造も異なります。VOR は民間航空の航法システムとして、TACAN は軍事航空の航法システムとして、それぞれの役割を果たしています。これらのシステムの違いを理解することで、航空無線航法システムに対する理解を深めることができるでしょう。