Wi-Fi 6の普及率は？

Wi-Fi 6の普及率：着実な拡大と今後の展望

Wi-Fi 6（IEEE 802.11ax）は、高速で安定した無線通信を実現する次世代Wi-Fi規格として、登場以来着実に普及を拡大しています。しかし、「50%超」という数字だけでは、その実態は掴みづらいでしょう。市場調査会社によって数字に差異があること、そして「普及率」自体が様々な定義を持ちうることを考慮しなければなりません。

例えば、「50%超」という数字は、出荷されたWi-Fi対応機器全体におけるWi-Fi 6搭載機器の割合を表している可能性があります。これは、新規に販売されたルーターやスマートフォンなどの割合を指し、既に市場に存在する膨大なWi-Fi 5以前の機器の存在は考慮されていない可能性が高いです。 つまり、実際にWi-Fi 6を利用しているユーザー全体の割合は、この数字よりも低くなるでしょう。

さらに、地域差も考慮しなければなりません。先進国、特に都市部ではWi-Fi 6対応機器の普及が進んでいますが、発展途上国や地方部では、Wi-Fi 5以前の規格が依然として主流である可能性が高いです。家庭における普及率と、企業における普及率も異なるでしょう。企業環境では、セキュリティや安定性への要求が高いため、最新規格への移行が比較的早い傾向があります。一方、家庭では、機器の買い替えサイクルやコストといった要因が普及速度に影響を与えます。

では、具体的な普及状況をどのように捉えるべきでしょうか？ いくつかの指標から現状を分析してみましょう。

まず、スマートフォン市場に着目すると、2022年後半から2023年前半にかけて発売されたハイエンドモデルは、ほぼ全てWi-Fi 6に対応していると言えます。ミドルレンジやローエンドモデルでも、Wi-Fi 6対応機種が増加傾向にあります。しかし、既存のスマートフォンユーザーの大半が、既に所有しているWi-Fi 5対応機種を使い続けていることを忘れてはなりません。

次に、Wi-Fiルーター市場です。新規購入されるルーターの多くはWi-Fi 6に対応していますが、ルーターの買い替えサイクルは比較的長いため、既存のWi-Fiルーターの大部分は、まだWi-Fi 6以前の規格である可能性が高いです。特に、回線速度が十分に速くない環境では、Wi-Fi 6への移行メリットを感じにくいため、買い替え需要は限定的です。

これらの事実から、Wi-Fi 6の普及率は、新規機器販売におけるシェアという指標では高い数値を示すものの、全体的なユーザーベースでの普及率は、まだ50%に到達していないと推測できます。

今後の展望としては、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7といった更なる進化した規格が登場していることから、Wi-Fi 6の市場シェアは、これらの新しい規格の普及と共に徐々に低下していくと予想されます。しかし、Wi-Fi 6は依然として、多くのユーザーにとって十分な性能を提供できる規格であり、中価格帯の機器を中心に、長期間にわたって利用され続けるでしょう。

結論として、Wi-Fi 6の普及率は一定のレベルに達しているものの、その数値の解釈には注意が必要です。 真の普及率を測るためには、単なる機器の販売台数だけでなく、実際にWi-Fi 6を利用しているユーザー数や、利用環境なども考慮した総合的な分析が必要となります。 今後の市場動向を注視していくことが重要です。