ベトナムの高校の就学率は？

ベトナムの高校進学：都市と農村の格差に迫る

ベトナムは近年目覚ましい経済発展を遂げていますが、その陰で教育機会の不平等という深刻な課題を抱えています。特に高校進学率において、都市部と農村部の間には大きな格差が存在し、それが将来のキャリアや所得格差に繋がる可能性が懸念されています。

統計によると、ベトナム全体の高校進学率は平均で70%程度ですが、都市部では76.4%と比較的高いのに対し、農村部では64.4%にとどまっています。この12%の差は、一見小さな数字に見えるかもしれませんが、数万人の生徒の人生に大きな影響を与える深刻な問題です。都市部の生徒はより良い教育環境と豊富な学習資源にアクセスできる一方、農村部の生徒は限られた資源の中で学習を続けなければならず、進学の機会を逃してしまうケースも少なくありません。

この格差は、一体どのような要因によって生み出されているのでしょうか。まず考えられるのは、教育資源の偏在です。都市部には、経験豊富な教師、最新の設備を備えた学校、充実した学習教材など、質の高い教育を受けるための環境が整っています。一方、農村部では、教師不足や老朽化した校舎、限られた教材といった問題を抱えている学校が多く、都市部と同等の教育を提供することが困難な状況です。

さらに、経済的な要因も大きな影響を与えています。農村部では、貧困のために子どもを高校に進学させる余裕がない家庭も少なくありません。学費や教材費に加え、都市部の高校に通うためには下宿費用なども必要となり、家計への負担はさらに大きくなります。そのため、才能や学習意欲があっても、経済的な理由で進学を諦めざるを得ない生徒もいるのです。

また、文化的な要因も無視できません。一部の農村地域では、高等教育を受けることよりも、早くから働きに出て家計を支えることが重要視される傾向があります。特に女子生徒の場合、家事や農作業を手伝うことを期待されるケースが多く、進学を断念せざるを得ない状況に置かれることもあります。

この教育格差を解消するため、ベトナム政府は様々な取り組みを行っています。例えば、農村部の学校への財政支援の強化、教師の育成・配置の改善、奨学金制度の拡充などです。また、遠隔教育システムの導入やオンライン学習プラットフォームの活用など、テクノロジーを活用した教育機会の提供も進められています。

しかし、これらの取り組みだけでは十分とは言えません。真の教育機会均等を実現するためには、地域社会全体でこの問題に取り組む必要があります。例えば、地域住民による学習支援ボランティア活動の推進、企業による教育支援プログラムの実施、そして何よりも、教育の重要性に対する社会全体の意識改革が不可欠です。

ベトナムの未来を担う若者たちが、出身地や経済状況に関わらず、平等に教育を受ける権利を保障されること。それが、真に豊かで持続可能な社会を実現するための重要な一歩となるはずです。そして、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、共に解決策を探っていくことが求められています。