中国のインバウンドは2024年にどのくらいになる？

2024年、中国からのインバウンド観光客数：回復への道筋と不確定要素

新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、壊滅的な打撃を受けた中国からのインバウンド観光。2024年、その回復はどの程度の規模となるのか、専門家の予測は依然として分かれているものの、緩やかなながらも増加傾向にあることは確かだ。しかし、楽観的な見通しと同時に、いくつかの不確定要素が回復のペースを左右する重要な鍵となるだろう。

2019年、中国からの観光客数は日本において年間959万人にも上り、経済効果は計り知れないものがあった。その勢いを完全に取り戻すには、依然として多くの課題が存在する。一つは、中国国内の経済状況だ。ゼロコロナ政策からの急激な転換後、中国経済は依然として不安定な状態にある。消費者の購買意欲の回復には時間を要し、海外旅行への支出は優先順位が低くなる可能性も否定できない。そのため、高額な海外旅行を計画する富裕層からの需要のみならず、ミドルクラスや若年層からの需要の回復が鍵となる。

もう一つの重要な要素は、中国政府の方針だ。近年、中国政府は海外旅行に関する規制を徐々に緩和している。ビザ発給の簡素化や国際線便の増加は、中国からの観光客の増加に大きく貢献するだろう。特に、日本へのビザ取得手続きの簡素化や、更なるビザ免除政策の拡大は、旅行のハードルを下げ、潜在的な観光客の増加へと繋がるだろう。しかし、政府の方針は、地政学的な状況や国際関係に影響されやすく、予測可能性に欠ける側面もある。

さらに、地政学的な緊張も無視できない要素だ。日中関係を始めとする国際情勢の不安定さは、中国国民の日本への旅行意欲に影響を与える可能性がある。ネガティブな報道や政治的な摩擦は、旅行計画を延期・中止させる要因となるため、安定した国際関係の維持が不可欠と言える。

専門家の間では、2024年の中国からのインバウンド観光客数は、2019年の水準には到達しないとの見方が多い。回復のペースは、中国経済の回復状況、政府の観光政策、そして国際情勢の安定性といった複数の要因に左右されるため、正確な数値を予測することは非常に難しい。しかし、楽観的なシナリオでは、2019年の水準の50%程度、悲観的なシナリオでは30%程度に留まる可能性も示唆されている。

現状では、増加傾向にあるものの、完全な回復には数年を要するだろうという見方が支配的だ。2024年は、回復への道筋を確かめる重要な年となる。各国の政府や観光関連事業者は、中国からの観光客の受け入れ体制を整え、魅力的な観光プログラムを提供することで、回復を促進していく必要があるだろう。同時に、不確定要素を常に注視し、柔軟な対応を心がけることも重要となる。 中国からのインバウンド観光の回復は、日本経済にとっても大きな影響を持つため、今後の動向を綿密に分析し、戦略的な対応を検討していくことが求められる。 それは、単なる観光客数の回復だけでなく、持続可能な観光のあり方を探求していくことにも繋がっていくはずだ。