九州新幹線が通っていない県は？

九州新幹線、未だ延伸待ちの県あり：大分県と宮崎県の現状と課題

九州新幹線は、西日本を縦断する重要な交通インフラとして、近年大きな発展を遂げてきました。2011年の全線開業（博多～鹿児島中央間）から始まり、2022年には長崎県佐世保市まで延伸した西九州新幹線が開業。九州各地へのアクセスが飛躍的に向上しました。しかし、いまだに九州新幹線が通っていない県が存在します。それは、大分県と宮崎県です。本稿では、この二県における新幹線未開通の現状、その背景、そして未来展望について考察します。

大分県と宮崎県が新幹線未開通である理由を一言で言えば、「コストパフォーマンス」と「需要」のバランスが難しい点にあります。九州新幹線は、莫大な建設費用を必要とする大型プロジェクトです。特に、山岳地帯や人口希薄地域を走行するルートでは、建設費の高騰は避けられません。大分県や宮崎県の一部地域はまさにそのような地形であり、費用対効果の面から、優先順位が低くなっているのが現状です。

具体的な課題としては、以下が挙げられます。

• 路線選定の困難さ： 大分県と宮崎県は、それぞれ複雑な地形と人口分布を持っています。最適なルート選定は容易ではなく、複数の候補ルートにおける費用対効果の比較検討が必要となります。山岳地帯でのトンネル建設は高コストとなり、環境問題への配慮も不可欠です。
• 経済効果の不確実性： 新幹線の建設による経済効果は、必ずしも期待通りに現れるとは限りません。人口減少や地域経済の衰退が進む地域では、新幹線開業による効果が限定的な可能性も考えられます。十分な経済効果が見込めるルート選定が重要となります。
• 地元住民の合意形成： 新幹線建設は、土地収用や環境への影響など、地元住民との合意形成が不可欠です。十分な説明と理解を得ることが、プロジェクトの成功に繋がる重要な要素となります。反対意見や懸念事項を丁寧に聞き取り、解決策を模索する必要があります。

一方、新幹線延伸の必要性も無視できません。大分県には別府温泉など観光資源が豊富で、宮崎県には美しい海岸線や豊かな自然があります。これらの地域へのアクセス向上は、観光客誘致や地域経済活性化に大きく貢献する可能性を秘めています。新幹線が開通すれば、観光客の増加による雇用創出や地域経済の活性化が期待できます。また、災害時の迅速な避難手段の確保や、都市部とのアクセス向上による地域間交流の促進といった、社会的なメリットも期待できます。

現在、大分県と宮崎県では、新幹線延伸に向けた具体的な検討が進んでいませんが、将来的には、新たな技術や資金調達方法、そして人口減少対策といった課題への対応が求められます。例えば、既存の在来線を高速化するという選択肢も検討されるべきでしょう。また、国や地方自治体による財政支援のあり方についても、抜本的な見直しが必要となるかもしれません。

結論として、九州新幹線が通っていない大分県と宮崎県においては、費用対効果や地域住民の合意形成といった課題をクリアすることが、延伸実現の鍵となります。今後の技術革新や社会情勢の変化を踏まえ、慎重かつ綿密な検討が求められています。単なる交通インフラ整備ではなく、地域社会全体の活性化に繋がる持続可能な計画こそが、真の課題解決に繋がるでしょう。