広島にある水に浮かぶ美術館は?

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広島にある、水に浮かぶ美術館は「可動展示室」です。下瀬美術館は、建築資材メーカー・丸井工業の下瀬ゆみ子氏とその両親のコレクション約500点を展示する私設美術館です。

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広島の瀬戸内海に浮かぶ、独特の美術館をご存知でしょうか? 一般的に「水に浮かぶ美術館」として知られているのは、厳密には「可動展示室」という、ユニークな存在です。 これは、広島県廿日市市にある下瀬美術館の一部であり、単なる「水に浮かぶ」という表現では捉えきれない、奥深い魅力を秘めているのです。

下瀬美術館は、建築資材メーカーである丸井工業社長・下瀬雅夫氏とその夫人、そして娘である下瀬ゆみ子氏によって収集された、約500点にも及ぶ美術コレクションを展示する私設美術館です。 そのコレクションは、現代美術を中心に、彫刻、絵画、写真、工芸など多岐に渡ります。 しかし、この美術館の真の個性は、その展示方法、そして立地にあります。

建物の設計は、建築家・坂茂氏。坂茂氏といえば、段ボール建築で知られる世界的建築家です。 下瀬美術館は、彼の建築思想を反映した、軽快で洗練されたデザインが特徴です。 特に、可動展示室はその象徴と言えるでしょう。 これは、水面に浮かぶ、まるで小さな島のような建物。 厳密には、完全に水に浮かんでいるわけではなく、水面に固定された杭によって支えられています。しかし、その軽やかな佇まいは、海面に浮かぶ蓮の葉のような、自然との調和を感じさせます。

この可動展示室の最大の特長は、その名前が示す通り、移動が可能である点です。 もちろん、大きな船のように自由に海を航行できるわけではありませんが、曳航によって、美術館の敷地内にある複数の水面で位置を変えることができます。 これは、展示作品だけでなく、鑑賞者の視点までも変え、常に新しい鑑賞体験を提供する、画期的な試みと言えるでしょう。 例えば、季節や天候、時間帯によって、建物と周囲の風景との関係性が変化し、作品の見え方も、そして感じ方も変わってくるのです。夕焼けに染まる海面を背景に浮かぶ可動展示室は、幻想的な美しささえ醸し出します。

さらに、下瀬美術館全体が自然との共存を強く意識した設計となっています。 周辺の豊かな自然環境を活かし、建物と風景が一体となって、訪れる者に安らぎと感動を与えます。 美術館内には、瀬戸内海の美しい景色を一望できる場所もあり、作品鑑賞だけでなく、自然散策も楽しむことができます。 まさに、アートと自然が融合した、独特の空間が創り出されているのです。

単なる「水に浮かぶ美術館」というキャッチフレーズでは伝えきれない、下瀬美術館、そしてその可動展示室の魅力。 それは、建築、美術、自然、そして鑑賞者の感性、それらが複雑に絡み合い、生み出される、唯一無二の体験と言えるでしょう。 広島を訪れる際には、ぜひ一度、この特別な美術館を訪れて、その魅力を体感してみてください。 静かな水面に浮かぶ可動展示室は、きっとあなたの心に忘れられない印象を残すことでしょう。 そして、その体験は、通常の美術館では得られない、特別な感動をあなたに届けてくれるはずです。