新宿御苑の料金は昔いくらだった？

新宿御苑の料金は昔いくらだった？ 昭和初期の20銭から紐解く、国民の憩いの場への道のり

新宿御苑は、都会の喧騒を忘れさせてくれる緑豊かなオアシスとして、多くの人々に親しまれています。現在の入園料は大人500円ですが、その歴史を遡ると、意外な事実にたどり着きます。それは、昭和初期の開園当初、わずか 20銭 という破格の値段で一般公開されていたということです。

現代の貨幣価値に換算すると、20銭は数百円程度と考えられますが、当時の物価水準を考慮すると、現在とは比較にならないほど安価だったと言えるでしょう。大衆浴場の入浴料が数銭だった時代に、広大な庭園を一日楽しめることを考えれば、そのお得感は想像に難くありません。

では、なぜこれほどまでに安い料金で公開されていたのでしょうか？

当時の新宿御苑は、皇室庭園として整備されていましたが、その一部を一般公開することで、国民のレクリエーションの場として活用されることが期待されていました。また、開園当初は経営基盤が脆弱だったため、低価格で多くの来場者を集め、運営資金を確保するという目的もあったと考えられます。

実際、開園からわずか10ヶ月で105万人もの来場者を集めるという大成功を収めています。これは、御苑の美しい景観や豊かな自然に加え、20銭という手頃な入園料が大きく貢献したことは間違いないでしょう。

この成功を受けて、その後の運営組織の設立や施設の充実が進められ、現在の新宿御苑の礎が築かれていきました。20銭という入園料は、単に安価な料金設定だったというだけでなく、国民に愛される庭園へと発展していくための重要な戦略だったと言えるでしょう。

しかし、時代とともに物価は変動し、運営コストも増加していきます。戦後の混乱期を経て、入園料は徐々に値上げされていき、現在の500円に至っています。

現在の入園料は、当時の20銭と比較すると大幅に高くなっていますが、それでも都心の一等地にある広大な庭園を維持管理するための費用を考えると、決して高すぎるということはないでしょう。

新宿御苑の入園料の変遷を辿ることは、日本の社会情勢や経済状況の変化を垣間見ることにも繋がります。20銭から500円へ。その背景には、国民の憩いの場を守り続けるための努力と工夫が詰まっているのです。

今度、新宿御苑を訪れる際には、かつて20銭で入園できた時代があったことを思い出し、その歴史と価値に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。