水族館のない県は？

日本の都道府県の中で、水族館を全く保有していない県は、奈良県と佐賀県の2つのみです。これは一見すると意外に感じるかもしれません。海に面していない県であれば理解できるという意見もあるかもしれませんが、奈良県は内陸県である一方、佐賀県は有明海に面しているため、水族館が存在しない理由を単純に地理だけで説明することはできません。 では、なぜこれらの県に水族館がないのでしょうか？その背景には、いくつかの複雑に絡み合った要因が考えられます。

まず、経済的な要因が挙げられます。水族館は建設・維持費が非常に高額です。多様な魚種を確保するためのコスト、水槽や設備の維持管理、飼育員の確保、そして集客のための広報活動など、膨大な費用が必要です。特に地方自治体においては、財政状況によっては、こうした高額な投資は大きな負担となるでしょう。特に、近年は地方自治体の財政難が深刻化しており、優先順位の高い事業に予算を充てる必要があり、水族館建設は後回しになりやすい傾向があります。

次に、集客の問題です。水族館は、観光客を惹きつけるための重要な施設の一つです。しかし、集客が見込めない場合は、建設・維持費を回収することが難しく、投資リスクが高まります。奈良県と佐賀県は、他県に比べ、観光客数自体が必ずしも多くない、または近隣県に魅力的な観光スポットや、既に大規模な水族館が存在するという状況にあるため、新規の水族館建設による十分な集客が見込めない可能性があります。例えば、佐賀県であれば、長崎県にあるハウステンボスや、福岡県にあるマリンワールド海の中道など、近隣県に既に魅力的な水族館が存在しており、佐賀県内に新たに水族館を建設するメリットが薄れてしまう可能性があります。

さらに、立地条件も重要な要素です。水族館は、アクセスしやすい場所に建設される必要があります。交通の便が悪ければ、観光客の来場を期待することが難しくなります。奈良県や佐賀県の一部地域では、交通アクセスに課題を抱えている場所もあり、これが水族館建設の障壁となっている可能性も否定できません。

また、地元住民のニーズも考慮すべきでしょう。水族館建設の賛否は、住民投票や意見聴取によって判断される場合もあります。建設予定地における環境への影響や、建設に伴う騒音問題、景観への影響などが懸念され、反対意見が強まるケースも考えられます。

以上の点を総合的に考慮すると、奈良県と佐賀県に水族館が存在しない理由は、単一の要因ではなく、経済的な制約、集客の見込み、立地条件、そして地元住民の意見など、様々な要素が複雑に絡み合っている結果であると考えられます。 単純に「人口が少ないから」や「海がないから」といった説明では、これらの県の事情を十分に理解することはできません。それぞれの県が抱える独自の事情を踏まえた上で、水族館建設の是非を検討する必要があるでしょう。 今後、これらの県の状況が変化し、水族館建設の機運が高まる可能性もゼロではありませんが、現状では、この2県が水族館を持たない理由として、これらの要因が大きな影響を与えていると結論付けることができます。