空港も新幹線の駅もない県は？

空港も新幹線もない鳥取県：その地理的条件と発展への挑戦

日本の47都道府県の中で、空港（県庁所在地に所在せず）、そして新幹線の駅もない県は、唯一鳥取県だけです。一見不便に思えるこの状況は、鳥取県の地理的条件と歴史的背景に深く根付いており、同時に独自の地域性と発展への挑戦を浮き彫りにしています。

鳥取県は、中国地方の日本海側に位置し、東西に細長い地形をしています。北は日本海に面し、南は中国山地に囲まれた自然豊かな地域です。県内には、米子鬼太郎空港が存在しますが、これは県西部の米子市に位置しており、県庁所在地である鳥取市には空港がありません。また、新幹線網からも外れており、県民の移動手段は主に自動車や在来線、高速バスに頼っています。

なぜ鳥取県には県庁所在地に空港がなく、新幹線も通っていないのでしょうか？その理由を探るには、地理的条件と歴史的経緯を紐解く必要があります。

まず、地理的な側面を見てみましょう。鳥取県は、東西に細長く、山間部が多い地形です。平野部は限られており、空港建設に適した広大な土地を確保することが困難です。特に県庁所在地である鳥取市周辺は、山々に囲まれており、大規模な空港建設は容易ではありません。米子市に空港が建設されたのも、比較的平坦な土地が広がっていることが理由の一つです。

また、中国山地が交通の障壁となっていることも、新幹線建設を阻む要因となっています。新幹線は高速で走行するため、線路は直線であることが理想的です。しかし、山間部が多い鳥取県では、トンネルや高架橋を多数建設する必要があり、建設コストが膨大になってしまうのです。さらに、人口が少ないことも、採算性の面から新幹線建設を難しくしています。

歴史的な背景も無視できません。高度経済成長期、日本の交通網整備は、人口密集地や経済活動の活発な地域を中心に進められました。鳥取県は人口が少なく、経済規模も相対的に小さかったため、交通インフラ整備の優先順位が低くなってしまったのです。

しかし、空港も新幹線もないという状況は、必ずしもネガティブな側面ばかりではありません。鳥取県は、豊かな自然環境と独自の文化を活かした地域づくりを進めており、近年では「星取県」を名乗り、星空観光を推進しています。また、鳥取砂丘や浦富海岸など、自然の景観を活かした観光資源も豊富です。交通の不便さは、逆に静かで落ち着いた環境を求める観光客にとっては魅力となる場合もあります。

さらに、鳥取県はIT技術を活用した地域活性化にも力を入れており、リモートワークの推進やオンラインビジネスの支援など、新たな取り組みを積極的に行っています。交通インフラの整備に頼らず、独自の戦略で地域経済の発展を目指しているのです。

もちろん、交通の不便さは、企業誘致や観光客誘致の面で課題となることもあります。県としても、交通アクセスの改善に向けた取り組みを継続しており、高速道路網の整備や、地域空港の活性化、リニア中央新幹線の誘致活動など、様々な施策を展開しています。

鳥取県は、空港も新幹線もないという地理的制約を抱えながらも、その独自の地域性と積極的な地域づくりによって、持続可能な発展を目指しています。不便さを逆手に取った戦略や、IT技術の活用など、鳥取県の挑戦は、他の地域にとっても参考になる点が多いと言えるでしょう。今後の鳥取県の発展に注目が集まります。