マイナンバーカードは作らなくても良いですか？

マイナンバーカードは作らなくても良いですか？ この問いに対する答えは、シンプルに「はい」でありながら、同時に「いいえ」でもあります。 法律上、マイナンバーカードの取得は義務付けられていません。しかし、社会情勢の変化と政府の方針を踏まえると、その実態は「義務化」に近づきつつあると言えるでしょう。

マイナンバー制度が導入された当初は、マイナンバー通知カードの交付が中心でした。通知カードはマイナンバーの確認にのみ使用でき、様々な行政サービスの利用には、マイナンバーカードの取得が求められるケースが増えてきました。 保険診療に関しても、以前は保険証の提示で問題ありませんでしたが、現在では「資格確認書」という、マイナンバーカードもしくはマイナポータルからの情報提供を用いた確認方法が主流になりつつあります。 つまり、カードを保有していなくても医療機関で診療を受けることは可能ですが、手続きの煩雑さや、医療機関側の負担増加という問題が生じているのが現状です。

では、なぜ「実質義務化」と言われるのか？ その背景には、政府が推進するデジタル化社会の構築が大きく関わっています。 マイナンバーカードは、単なる番号の確認ツールではありません。 運転免許証との一体化により、運転免許証として利用できるようになり、今後さらに様々なデジタルサービスとの連携が計画されています。 例えば、オンライン申請、各種手続きの簡素化、ポイント還元制度への参加など、マイナンバーカードを介して簡便に利用できるサービスが増えていくことが予想されます。

これらの利便性向上策の裏には、カード未保有者に対する不便さの増大が潜んでいます。 オンライン申請が主流になれば、カードを持たない人は、窓口に赴き、紙媒体による手続きを強いられることになります。 これは時間と労力の無駄遣いとなるだけでなく、高齢者やITに不慣れな人々にとっては大きな障壁となるでしょう。 また、マイナポータルを通じて政府からの重要なお知らせを受け取る機会も減少するため、行政との円滑なコミュニケーションが困難になる可能性も懸念されます。

さらに、マイナンバーカードの普及率向上を促進するための施策も実施されています。 ポイント付与や、自治体独自の特典などが提供されており、これらのインセンティブによってカード取得を促す動きが見られます。 しかし、これらの施策の裏には、カード未保有者の増加が社会全体のコスト増加や、デジタル化による格差拡大につながるという危惧があります。

結論として、マイナンバーカードは法律上義務ではありません。しかし、社会全体がデジタル化へ向かう中、カードを持たないことは、様々な場面で不便を招く可能性が高まっています。 政府の政策や社会情勢を踏まえ、自身の状況や将来的な利便性を考慮した上で、カードの取得について慎重に検討することが重要です。 メリットとデメリットを比較し、自分にとって最適な選択をすることが求められています。 単に「義務ではない」という情報だけで判断するのではなく、社会全体の動向と自身の生活を照らし合わせて、適切な決定を行うべきです。 情報収集を怠らず、冷静に判断することが大切です。