示談金は自由に決められますか？

示談金は「自由」に決められる？交渉の余地と相場、そして落とし穴

示談交渉において「示談金は自由に決められる」という言葉は、ある意味で真実であり、またある意味で誤りを含んでいます。示談交渉は、加害者と被害者が互いの主張をぶつけ合い、合意点を探るプロセスです。法的な拘束力を持つ判決とは異なり、当事者間の自由な意思に基づいて金額が決定されるという点では、「自由」と言えるでしょう。しかし、その「自由」にはいくつかの制約と、注意すべき落とし穴が存在します。

自由な交渉の余地とは？

示談交渉は、裁判所の判断に委ねる前に、当事者間で紛争を解決するための手段です。そのため、加害者側（保険会社や弁護士）が提示する金額に、被害者が必ずしも従う必要はありません。被害者は、自身の損害に見合った金額を主張する権利を持ちます。例えば、以下のような要素を考慮して、示談金の増額を求めることができます。

• 精神的苦痛: 事故や事件によって受けた精神的な苦痛は、金銭的に評価することが難しいですが、示談金に含めるべき重要な要素です。特に、後遺症が残ったり、日常生活に支障をきたすような場合には、慰謝料としてより高額な請求が可能です。
• 逸失利益: 事故や事件によって仕事ができなくなった場合、将来得られたはずの収入（逸失利益）を請求することができます。
• 過失割合: 事故の原因が一方的なものではなく、被害者にも過失がある場合、過失割合に応じて示談金が減額されることがあります。しかし、加害者側の主張する過失割合に納得できない場合は、根拠となる証拠を提示し、交渉する必要があります。

示談金の相場と算定基準

示談金は、上記のような要素を考慮して決定されますが、全くの「自由」ではありません。一般的には、過去の判例や保険会社の基準に基づいて算定される「相場」が存在します。示談金の算定基準は主に以下の3つです。

• 自賠責保険基準: 最も低い基準で、最低限の損害を補償するものです。
• 任意保険基準: 自賠責保険基準よりも高い金額が提示されることが多いですが、裁判基準と比較すると低い傾向があります。
• 裁判基準: 過去の裁判例に基づいて算出される基準で、最も高額になる傾向があります。弁護士が介入する場合、この裁判基準を参考に交渉することが一般的です。

示談交渉の落とし穴

示談交渉は、専門的な知識や交渉力が必要となるため、個人で行うには限界があります。特に、以下の点に注意が必要です。

• 焦って示談に応じない: 加害者側は早期解決を望むため、被害者を急かしてくることがあります。しかし、焦って示談に応じると、後々後悔する可能性があります。
• 損害額の算定を誤らない: 損害賠償の対象となる項目は多岐にわたります。適切な損害額を算定するためには、専門家の助けを借りることも検討しましょう。
• 時効に注意: 損害賠償請求権には時効があります。時効が成立すると、損害賠償を請求することができなくなるため、注意が必要です。

まとめ

示談金は、当事者間の合意によって「自由」に決められる側面がありますが、相場や算定基準、そして様々な制約が存在します。被害者としては、自身の損害に見合った金額を主張するために、専門家の助けを借りながら、慎重に交渉を進めることが重要です。示談交渉は、単なる金額交渉ではなく、自身の権利を守るための重要なプロセスであることを理解しておきましょう。