税込価格表示をしないとどうなる？

税込価格表示をしないとどうなる？ 消費者の信頼と事業継続への影響

2021年4月1日以降、価格表示に関する法律の改正により、事業者は商品やサービスの価格を消費税込みで表示することが義務付けられました。しかし、この義務に違反した場合、具体的な罰則が明確に定められていないことから、その影響について誤解されているケースが多いようです。確かに、罰金や懲役といった直接的なペナルティは存在しません。では、税込価格表示を怠ると、どのような問題が生じるのでしょうか？ それは、直接的な罰則以上に、事業にとって深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。

まず、最も顕著な影響は消費者からの信頼の失墜です。税込価格表示が義務化された背景には、消費者が価格を正確に把握し、安心して商品やサービスを購入できる環境を整備するという目的があります。消費税込みの価格が明示されていない場合、消費者は価格計算に手間取るだけでなく、不透明な価格設定に不信感を抱く可能性が高いでしょう。特に、価格に敏感な消費者や、高齢者など価格計算に困難を感じる消費者にとって、税込価格の非表示は大きな負担となります。一度信頼を失うと、その回復には多大な時間と努力が必要となることを忘れてはなりません。

さらに、税込価格表示をしないことは、消費者庁からの指導や是正勧告につながる可能性があります。消費者庁は、価格表示に関する法令遵守を促すため、監視や指導を行っています。もし、繰り返し税込価格表示を怠ったり、消費者を誤解させるような表示を行ったりした場合、消費者庁から是正を求める指導を受ける可能性があります。この指導に従わず、改善が見られない場合は、更なる行政指導や法的措置が取られる可能性も否定できません。ただし、これは直接的な罰則とは異なるものの、事業者にとって大きな負担となることは間違いありません。

また、税込価格表示の欠如は、企業イメージの悪化にもつながります。近年、企業の社会的責任（CSR）への関心が高まっています。法令遵守はCSRの重要な要素であり、法令違反は企業イメージの低下、ひいてはブランド価値の毀損に繋がる可能性があります。特に、SNSなどで情報拡散が容易になった現代において、価格表示に関する不備は瞬く間に広がり、大きな批判を招く可能性があります。

さらに、価格表示の不備は、競争力の低下にも繋がる可能性があります。消費者は、価格を比較して購入する商品やサービスを選択することが多いため、税込価格が明確に表示されていない場合、競合他社に比べて不利な立場に置かれる可能性があります。透明性のある価格設定は、消費者の購買意欲を高める上で非常に重要であり、価格表示の不備は、売上減少に繋がる可能性も否定できません。

結論として、税込価格表示をしないことによる直接的な罰則は存在しなくても、消費者からの信頼を失い、行政指導を受け、企業イメージを悪化させ、ひいては競争力を低下させるなど、事業継続にとって深刻なリスクを孕んでいると言えるでしょう。法令遵守は当然のことながら、消費者の利便性と信頼を確保することで、長期的な事業の発展に繋がることを認識する必要があります。 曖昧な価格表示は、ビジネスリスクを自ら増幅させる行為であると認識し、厳格な価格表示を行うことが重要です。