行政書士にできて司法書士にできないことは何ですか？

行政書士と司法書士はどちらも、法的な手続きをサポートする専門家ですが、業務範囲には明確な違いがあります。同じように見える部分もあるため、その違いを正確に理解することは、適切な専門家を選ぶ上で非常に重要です。本稿では、行政書士にできて司法書士にできないことに焦点を当て、その違いを明確に解説します。

まず、最も大きな違いは、許認可業務の範囲です。行政書士は、幅広い行政手続きの代理・書類作成を業務としています。これは、司法書士の業務範囲を大きく超えるものです。例えば、建設業許可申請、飲食店営業許可申請、風俗営業許可申請といった、国民生活に密着した許認可申請手続きは、行政書士の専売特許と言えるでしょう。これらの手続きは、法律の専門知識だけでなく、各都道府県や市町村の条例や通達、さらには担当官庁の慣例や運用までも理解する必要があります。複雑な手続きが多く、専門的な知識と経験が不可欠です。司法書士は、不動産登記や商業登記といった登記業務を主業務とするため、これらの許認可業務を行うことはできません。

具体的に、行政書士にできて司法書士にできない業務をいくつか挙げましょう。

• 建設業許可申請関連業務: 建設業許可申請は、複雑な手続きと書類作成を伴い、その専門性から行政書士の得意分野となっています。資格要件の確認、申請書類の作成、関係書類の収集、官庁への提出、そして許可取得後の手続きまで、行政書士は一貫して支援します。
• 飲食店営業許可申請関連業務: 飲食店を開業するには、保健所や消防署など複数の官庁への申請が必要となります。各官庁の要件を満たす書類を作成し、スムーズな許可取得をサポートするのは行政書士の重要な役割です。
• 各種産業廃棄物処理業許可申請関連業務: 産業廃棄物処理業の許可申請は、環境規制に関する深い知識が求められます。行政書士は、複雑な法令を理解し、申請手続きを円滑に進めるための専門的知識と経験を提供します。
• 外国人登録（現在は在留資格申請）関連業務: 外国人の方々の在留資格申請は、複雑な手続きと専門的な知識が必要なため、行政書士の活躍が目立つ分野です。申請書類の作成はもちろん、申請後の対応や更新手続きなども支援します。
• その他許認可申請業務: これ以外にも、自動車整備工場の許可申請、旅行業登録申請、宅地建物取引業登録申請、薬局開設申請など、多岐にわたる許認可申請業務が行政書士の業務範囲に含まれます。

これらの業務は、単に書類を作成するだけではありません。関係官庁との交渉や、申請書類の不備を事前に発見し修正すること、必要に応じて申請内容の修正提案を行うなど、高度な専門知識と経験、そしてコミュニケーション能力が求められます。司法書士は、これらの業務を扱うための資格や専門知識を持っていないため、行うことができません。

ただし、行政書士が行える業務であっても、司法書士の専門知識が必要となる場合があります。例えば、不動産に関する許認可申請であれば、土地や建物の登記に関する知識が不可欠となる場面も多く、そのような場合は、行政書士と司法書士の連携が効果的となるでしょう。 それぞれの専門家の得意分野を理解し、適切な専門家に依頼することが、円滑な手続きを進める鍵となります。

このように、行政書士と司法書士の業務範囲は明確に区別されており、行政書士の幅広い許認可業務への対応力は、司法書士にはない大きな強みとなっています。 それぞれの専門家の特性を理解した上で、自身のニーズに最適な専門家を選ぶことが重要です。