低体温症のステージはいくつですか?

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低体温症は、従来の軽・中等・重症の3段階分類に加え、現在ではSwiss staging system(HTI~HTV)による5段階分類が用いられています。 特にHT II以降は重症度が増し、死亡率は約40%と高く、迅速な対応が不可欠です。 正確な診断と治療には、体温測定とステージ判定が重要となります。

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低体温症は、体の熱産生が熱放散を下回り、体温が正常値(36~37℃)を下回った状態を指します。その深刻さは体温の低下度合いだけでなく、低下速度、患者の基礎疾患、暴露時間など複数の要因に依存するため、単純な分類だけでは対応しきれない複雑な病態です。従来は軽症、中等症、重症の3段階分類が一般的でしたが、より詳細な評価と迅速な対応を可能にするため、近年では5段階分類であるSwiss staging system(HTI~HTV)が注目を集めています。このシステムを用いることで、より正確な重症度判定とそれに合わせた治療戦略の立案が可能になります。

従来の3段階分類では、体温と症状に基づいて重症度を判断していました。軽症では体温が35℃~32℃、中等症が32℃~28℃、重症が28℃以下と分類されることが多く、それぞれに特有の症状が現れます。例えば、軽症では震えや倦怠感、中等症では意識障害や運動失調、重症では意識消失や呼吸不全などがみられるケースが多いです。しかし、この分類はあくまで目安であり、個々の患者の状態を正確に反映していない場合もあります。

一方、Swiss staging system(HTI~HTV)は、体温に加え、意識レベル、呼吸数、心拍数、血圧などの臨床症状を総合的に評価し、5段階(HTI~HTV)に分類します。

  • HT I (Mild Hypothermia): 体温32~35℃。震え、軽度の意識変化、手指の痺れなどがみられます。比較的軽症で、適切な保温処置で回復する可能性が高いです。

  • HT II (Moderate Hypothermia): 体温28~32℃。震えが消失し始め、意識レベルの低下、運動失調、呼吸数・心拍数の変化などがみられます。積極的な加温治療が必要となり、医療機関での対応が不可欠です。

  • HT III (Severe Hypothermia): 体温24~28℃。意識消失、呼吸抑制、徐脈、低血圧などがみられます。生命維持に必須な臓器の機能低下が始まり、救命処置が必要となる重症段階です。

  • HT IV (Profound Hypothermia): 体温20~24℃。心停止や無呼吸などの状態が確認されます。心臓マッサージなどの積極的な蘇生処置が必要であり、予後不良となる可能性が高いです。

  • HT V (Extreme Hypothermia): 体温20℃以下。ほぼ心停止状態であり、蘇生成功率は極めて低いです。

特にHT II以降は重症度が高く、心血管系、呼吸器系、神経系への影響が深刻になります。例えば、心室細動や不整脈の発生リスクが高まり、心停止に至る可能性もあります。また、低体温による代謝低下によって臓器障害が進行し、回復に時間を要したり、後遺症が残る可能性も考えられます。死亡率はHT II以降で約40%に達するとされており、迅速な診断と適切な治療が生命予後に大きく影響します。

低体温症の治療は、まず患者の安全を確保し、体温を上昇させることが最優先事項です。保温処置、加温療法、酸素供給、必要に応じて循環器・呼吸器サポートなどの積極的な治療が必要になります。 治療の成功率は、低体温症のステージと発見から治療開始までの時間、そして適切な医療処置の迅速性に大きく依存します。そのため、低体温症の早期発見と、Swiss staging systemのような詳細な分類に基づいた的確な治療が極めて重要なのです。 一般市民は、低体温症の症状を理解し、早期に医療機関を受診することが重要です。 また、寒さに対する適切な防寒対策を講じることも、低体温症予防の第一歩となります。