種苗法で海外持ち出し禁止の種は？

種苗法改正で何が変わる？海外持ち出し制限の現状と課題

近年、日本の優れた品種が海外へ不正に持ち出され、無断で増殖・販売される事例が相次いでいます。この問題に対処するため、種苗法が改正され、海外への持ち出しに関する規制が強化されました。しかし、改正種苗法によって実際に何が変わり、どのような課題が残されているのでしょうか。

現行の種苗法の問題点と改正の背景

現行の種苗法では、品種登録された種苗であっても、合法的に購入されたものであれば海外への持ち出し自体は禁止されていませんでした。これは、農産物の国際的な取引を円滑に進めるための配慮でもありましたが、同時に、海外での無断増殖を許してしまうという弱点にもなっていました。

特に、近年ではインターネットの発達により、海外への種苗の持ち出しが容易になり、SNSやオンラインマーケットプレイスを通じて無断で増殖された種苗が販売される事例が増加しています。これらの不正行為は、日本の育種家の努力と知的財産を侵害するだけでなく、日本の農業の国際競争力低下にもつながりかねません。

こうした背景から、種苗法改正の必要性が高まり、海外への持ち出しに関する規制強化が焦点となりました。

改正種苗法における海外持ち出し制限の強化

改正種苗法では、登録品種であっても、育成者の許諾なしに海外へ持ち出すことを原則禁止とする制度が導入されました。具体的には、

• 育成者権の侵害に対する罰則強化: 育成者権を侵害する行為に対する罰則が大幅に引き上げられ、抑止効果を高めることが期待されています。
• 輸出先の制限: 育成者が指定した国以外への輸出を禁止することができます。これにより、育成者は特定の国での無断増殖を未然に防ぐことが可能になります。
• 譲渡先の制限: 育成者が指定した者以外への譲渡を禁止することができます。これにより、国内での不正な流通を防ぎ、海外への流出リスクを低減することができます。

残された課題と今後の展望

今回の種苗法改正は、海外への種苗の不正持ち出しを防止するための大きな一歩と言えます。しかし、いくつかの課題も残されています。

• 水際対策の強化: 税関での検査体制を強化し、不正な種苗の持ち出しを水際で阻止する必要があります。
• 国際協力の推進: 関係国との連携を強化し、情報共有や共同取締りを行うことが重要です。
• 品種登録の促進: より多くの品種が登録されることで、育成者権が保護され、海外での無断増殖を防ぐことができます。
• 種苗業界への支援: 海外への輸出を検討する育種家に対して、法規制や手続きに関する情報提供や支援を行う必要があります。

種苗法改正は、日本の農業を守り、国際競争力を高めるための重要な取り組みです。しかし、改正された法律を効果的に運用し、残された課題を解決していくためには、政府、育種家、種苗業者、そして消費者が一体となって取り組む必要があります。日本の優れた品種が海外で正当に評価され、利用されるように、今後も種苗法の運用状況を注視し、必要に応じて改善していくことが求められます。