手術中にジェルネイルはダメですか？

手術を受ける際にジェルネイルが許されるのかどうか、多くの方が疑問を抱いていると思います。結論から言うと、手術直前にはジェルネイルを含む全ての付け爪は除去するべきです。 これは単なる病院の規定ではなく、患者の安全と手術の成功に直結する重要な事項なのです。

一見些細に見えるジェルネイルですが、手術においては深刻なリスク要因になり得ます。その理由は、主に以下の3点に集約されます。

1. 酸素飽和度測定の妨げ: 手術中は、患者の血中の酸素飽和度を絶えずモニターすることが不可欠です。パルスオキシメーターという機器を使用しますが、この機器は指先に装着し、爪の色や血流量の変化から酸素飽和度を測定します。ジェルネイルは、この測定を妨げる可能性があります。厚いジェル層は光の透過を阻害し、正確な測定値を得ることが困難になります。わずかな測定誤差が、重大な事態につながる可能性も否定できません。特に緊急性の高い手術においては、正確なデータの取得は生死を分ける問題になり得ます。

2. 循環状態の観察の困難: 手術中は、患者の末梢循環状態を注意深く観察する必要があります。指先のチアノーゼ（青紫色に変色）や蒼白などは、低酸素血症や循環不全を示唆する重要なサインです。ジェルネイルは、これらの微妙な色の変化を隠してしまうため、医師が患者の状態を正確に把握することを困難にします。結果として、適切な対応が遅れ、患者の状態が悪化する可能性があります。特に、手術中に血圧や循環に問題が発生した場合、迅速な対応が求められるため、ジェルネイルの存在は大きな障害となります。

3. 感染リスクの増加: ジェルネイルの装着、除去過程において、爪や皮膚に小さな傷がつく可能性があります。手術室は、細菌感染のリスクを極力低減するために厳格な滅菌が行われていますが、傷口から細菌が侵入するリスクは常に存在します。特に、ジェルネイルの除去に使用する器具の消毒が不十分な場合、感染リスクは高まります。手術という、本来細菌感染のリスクが高い状況下において、このリスクを少しでも減らすことが重要です。

さらに、手術の種類によっては、ジェルネイルの成分が薬剤と反応を起こす可能性も否定できません。具体的なリスクは薬剤の種類やジェルネイルの種類によって異なるため、一概には言えませんが、可能性を完全に排除することはできません。

これらの理由から、手術を受ける際には、ジェルネイルのみならず、全ての付け爪の除去が強く推奨されます。医師や看護師から具体的な指示がある場合、それに従うことはもちろんのこと、事前に自身で除去しておくことが、安全な手術のための重要な準備となります。 疑問があれば、担当医に事前に相談し、不安を解消しておくことが大切です。手術の成功は、患者と医療スタッフ双方による綿密な準備と協力によって成り立ちます。小さなことと思わず、安全な手術に向けて、万全の準備を心がけましょう。