子育てで一番大変だったことは何ですか？

子育てで一番大変だったことは、一言で言い表すのは難しい。授乳や睡眠不足といった肉体的な苦労も確かにあったが、それ以上に私を悩ませたのは、自分自身の「不完全さ」との戦いだった。完璧な母親像という、社会やメディアが作り上げた幻想との格闘、それが子育てで最も困難だったと言えるだろう。

初産だった私は、育児書やネットの情報に溺れがちだった。どの離乳食がいいのか、どんなおもちゃを選べばいいのか、睡眠トレーニングはいつから始めるべきなのか…あらゆる情報が押し寄せ、どれが本当に我が子にとって正しいのか、分からなくなった。完璧なマニュアルはないのに、完璧な母親像を目指してしまう。その葛藤が、想像以上に精神的な負担となった。

例えば、授乳。母乳育児にこだわり、必死に頑張ったものの、思うようにミルクが出ない時期があった。周りの母親たちは皆、順調に母乳育児をしているように見えた。SNSにアップされる、笑顔の赤ちゃんに囲まれた幸せそうな母親たちの写真。それを見るたびに、自分の不甲斐なさに涙がこぼれた。充分にミルクが出なくても、ミルクを足してあげればいいのに、完璧主義の私は、母乳だけで育てなければいけないという、自分自身に課したプレッシャーに苦しんだ。

睡眠不足も、肉体的な疲労だけでなく、精神的な不安定さを招いた。常に疲労困憊の状態では、些細なことでイライラし、子供に当たってしまうこともしばしばあった。そんな自分を責め、自己嫌悪に陥る悪循環。自分の感情をコントロールできないことに、母親として本当に大丈夫なのかと、深い不安に襲われた。

離乳食もまた、試行錯誤の連続だった。栄養バランスを考え、アレルギーにも気を配り、そして何より、子供が喜んでくれるものを探す。食べムラに悩まされた時期は、食事のたびにストレスを感じた。子供は成長するにつれて、自分の意思を持つようになり、食べたいものを自分で選ぼうとする。完璧な栄養バランスを考えすぎて、子供の食への興味を阻害してしまっているのではないかと、罪悪感に苛まれた。

振り返ってみると、子育てで一番大変だったのは、完璧な母親像という幻想を追いかけ、自分自身を追い詰めていたことだ。誰だって完璧ではない。失敗したり、子供に怒鳴ったり、自分の感情に振り回されたりする時もある。そんな自分を受け入れ、許せるようになり、子育ては少し楽になったように思う。完璧を目指さず、子供と向き合い、その日一日を大切に過ごすこと。それが、私にとっての、そしておそらく多くの母親にとっての、子育ての真髄なのかもしれない。 子育ては、子供を育むことと同時に、自分自身を育む時間でもある。不完全な自分を受け入れ、子供と共に成長していくこと。それが、これから子育てをする人への、私のささやかなメッセージだ。