2024年の日本の食料自給率は？

2024年、日本の食料自給率：現状と課題、そして未来への展望

2024年（令和5年度）の日本の食料自給率は、カロリーベースで38％、生産額ベースで61％と発表されました。この数字、一見すると生産額ベースの方が高いので安心できるように思えますが、実際には深刻な課題を抱えていることを示しています。カロリーベースの38％という数値は、日本の食料安全保障における脆弱性を如実に物語っており、多くの国民がその実態を理解し、真剣に受け止める必要があります。本稿では、この現状を詳細に分析し、その背景、課題、そして未来への展望について考察します。

カロリーベースの自給率が低い最大の理由は、コメなどの主食の自給率が高い一方で、肉類、野菜、果物、乳製品など、多様な食生活を支える重要な食料品において自給率が著しく低いことにあります。特に輸入に依存している畜産物や飼料用穀物は、国際情勢の変動や異常気象の影響を受けやすく、価格の高騰や供給不安に直結します。近年では、ウクライナ情勢や円安、異常気象による穀物価格の高騰が、日本の食卓に大きな影響を与えたことは記憶に新しいでしょう。

生産額ベースの自給率が高いのは、加工食品や高付加価値製品の生産が国内で行われているためです。しかし、生産額ベースは、カロリー摂取量や食料の量的安定性を示す指標としては不十分です。仮に、高付加価値の加工食品の生産が盛んであっても、その原料となる農産物の多くを輸入に頼っている状態では、食料安全保障は脆弱なままです。つまり、生産額ベースの数字だけで安心することは危険なのです。

この低い食料自給率の背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。一つは、高齢化と農業従事者の減少です。若い世代が農業を敬遠する傾向が強く、農業の担い手不足は深刻な問題となっています。生産性向上のための技術革新や、魅力的な就農環境の整備が急務です。

また、耕作放棄地の増加も大きな課題です。高齢化や農業経営の困難さから、耕作放棄地は全国的に増加しており、貴重な農地が有効活用されない状況が続いているのです。都市部と農村部の連携による土地の有効活用や、新規就農者の支援など、多角的なアプローチが必要不可欠です。

さらに、消費者側の意識改革も重要です。国産農産物の購入を促進する動きや、地産地消を意識した食生活への転換も必要です。しかしながら、国産農産物は輸入品に比べて価格が高い傾向にあり、消費者の購買行動に影響を与えていることも事実です。価格と安全・安心のバランスを考慮した、賢い消費行動の促進も重要な課題となっています。

将来にわたって日本の食料安全保障を確保するためには、生産性向上、担い手確保、耕作放棄地の解消、消費者意識の変革、そして政府による積極的な政策支援が不可欠です。単に数字の改善を目指すのではなく、持続可能な農業と食料システムの構築に向けた、抜本的な改革が必要です。 2024年の食料自給率は、日本の食料安全保障の現状を改めて私たちに突きつける警鐘であり、未来への課題を明確に示していると言えるでしょう。