電車が少ない県はどこですか？

日本の地方において、鉄道は生活の重要なインフラとして機能している一方、その路線網の密度や車両の種類は地域によって大きく異なります。特に、電車の運行が一切ない地域が存在する事実は、多くの人にとって驚きかもしれません。 では、日本で電車が全く走っていない県はどこなのか、そしてその背景にはどのような事情があるのでしょうか。

先に結論を述べると、徳島県がその該当県です。全国の都道府県の中で、旅客鉄道として電車が一切運行されていないのは、徳島県ただ一つです。これは決して「電車が走らない」という表現で片付けるには複雑な事情が絡み合っている現実なのです。

徳島県には鉄道が存在しないわけではありません。JR四国徳島線、牟岐線、予讃線（高徳線を含む）などが運行されています。しかし、これらの路線は全て電化されておらず、気動車（ディーゼルカー）が主体となっています。つまり、電気で走る電車ではなく、ディーゼル燃料を動力とする車両が運行されているのです。この点が、徳島県を他の県と一線を画す重要なポイントです。

では、なぜ徳島県では電車が走っていないのでしょうか？ その背景には、地理的要因、人口密度、経済状況など、複数の要素が複雑に絡み合っています。

まず、徳島県の地形は、山岳地帯が多く、平野部が比較的狭いという特徴があります。鉄道敷設には、険しい山々をトンネルや橋梁で克服する必要があり、その建設費用は膨大になります。電化された電車運行に必要な設備投資は、さらに高額になります。限られた人口と経済規模を考慮すると、莫大な投資に見合うだけの収益が見込めないという判断が下された可能性が高いでしょう。

また、徳島県の人口密度は、全国平均と比較して低い方です。鉄道需要は人口密度と密接に関係しており、人口が少ない地域では、電車を運行する経済的合理性が見出しにくいと言えます。ディーゼルカーは、電化設備の建設費用が不要なため、少ない利用者でも運行を維持しやすいというメリットがあります。

さらに、徳島県は、四国の中でも比較的経済規模が小さい県です。財政的な制約から、大規模な鉄道電化投資を行うことが難しいという事情も考えられます。 他の四国地方の県と比較しても、徳島県の鉄道電化率は非常に低く、これは県全体の経済状況や開発の優先順位を反映していると言えるでしょう。

ただし、これは徳島県独自の事情ではなく、日本の地方部全体が抱える課題を反映しています。少子高齢化による人口減少、地方経済の衰退、そして限られた公共予算といった問題が、地方鉄道の維持・発展を困難にしています。徳島県は、これらの問題を顕著に示す一例と言えるかもしれません。

今後、徳島県において電車が運行される可能性は低いと予想されますが、地域住民の移動手段を確保するための、より効率的な交通システムの構築が重要な課題となっています。バス路線の拡充や、地域間を結ぶ高速道路網の整備など、鉄道以外の交通手段との連携強化が求められています。徳島県の交通事情は、地方の活性化を考える上で重要な示唆を与えてくれると言えるでしょう。