今の1円玉 いつから？

今の1円玉、その誕生と50年を超える歴史

日本の財布に常駐し、日々の現金取引に欠かせない存在である1円玉。その軽くて薄い金属片は、私たちの経済生活を支える小さな巨人と言えるでしょう。しかし、このごくありふれた硬貨にも、意外と知られていない歴史があります。現在流通している1円玉は、一体いつから私たちの傍らにあるのでしょうか？

結論から言えば、現在のデザインの1円玉は昭和30年（1955年）6月1日から発行されています。それ以前にも1円硬貨は存在しましたが、材質やデザインが大きく異なっていました。明治時代から昭和29年までの1円硬貨は、主に青銅（銅と錫の合金）や白銅（銅とニッケルの合金）で作られており、現在のアルミニウム製とは大きく異なります。重量も現在の1円玉よりもはるかに重く、例えば昭和23年発行の1円硬貨は、約1.8gありました。現在の1円玉の重量は1gにも満たないため、その軽さの違いは歴然としています。

では、なぜ昭和30年に材質がアルミニウムに変更されたのでしょうか？その背景には、戦後の経済復興と金属資源の確保という大きな課題がありました。青銅や白銅は銅を多く含むため、それらの製造には多量の銅資源が必要でした。戦後の日本は、銅の輸入に大きく依存しており、資源の安定供給が大きな問題となっていました。そこで、豊富に存在し、比較的安価なアルミニウムを素材とすることで、コスト削減と資源の有効活用を図ることが決定されました。

アルミニウム製の1円玉は、それまでの硬貨と比べて軽量かつ安価であるという利点がありました。しかし、同時に課題も存在しました。アルミニウムは銅と比較して柔らかく、傷つきやすいという性質を持っています。そのため、現在の1円玉は、使用を重ねるうちに摩耗し、表面が白っぽく変色したり、凹凸が生じたりすることがあります。それでも、その軽さと安価さから、1円玉は流通を続け、私たちの日々の生活に不可欠な存在として定着しました。

また、デザインについても、昭和30年からの1円玉は、現在のデザインとほぼ同一です。中央に「一」の文字が刻印され、周囲にはギザギザの縁取りがあります。このシンプルなデザインは、長きに渡り変更されることなく、国民に親しまれてきました。

現在、1円玉は日本の最小額面の貨幣として、現金取引の最小単位を担っています。その小さな存在感は、一見すると目立たないかもしれませんが、私たちの経済活動を支える基盤をなす重要な役割を果たしているのです。昭和30年の誕生から60年以上が経ち、材質や製造技術の進化を経ながらも、その役割は今も変わりません。私たちの身近にあるこの小さな金属片は、日本の戦後経済史の一端を物語る、生きた証でもあるのです。 今後、キャッシュレス化が進展する中で、1円玉の未来がどうなるかは不透明な部分もありますが、その歴史と役割はこれからも語り継がれていくことでしょう。