音楽の著作権は50年から70年になりましたか?

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日本の著作権法改正により、音楽を含む多くの著作物の保護期間が、従来の死後50年から70年に延長されました。ただし、映画は除かれ、既存の規定が維持されます。この改正はTPP11協定に基づき、2018年12月30日から施行されています。実演やレコードについても同様の延長が適用されます。

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音楽著作権の保護期間延長:過去50年から70年へ、その影響と背景

2018年12月30日、日本の著作権法が改正され、音楽著作権を含む多くの著作物において、保護期間が著作者の死後50年から70年に延長されました。これは、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11)に基づいたもので、国際的な著作権保護の水準に足並みを揃えるための措置と言えます。

今回の改正は、音楽業界全体に大きな影響を与える可能性があります。具体的にどのような変化が予想されるのでしょうか?

まず、著作権保護期間の延長は、著作権者(多くの場合、作詞家、作曲家、音楽出版社など)とその相続人にとって、より長期間にわたって著作権収入を得られることを意味します。これは、クリエイターの創作活動を経済的に支え、新たな作品の創出を促進するインセンティブとなると期待されています。

一方で、著作権が切れるまでの期間が長くなることで、パブリックドメイン(著作権が消滅し、誰でも自由に利用できる状態)となる楽曲が減少し、過去の楽曲を自由に利用できる機会が減少するという側面も存在します。例えば、過去の楽曲をアレンジして新たな作品を制作する場合や、教育目的で楽曲を利用する場合など、著作権処理が必要となるケースが増える可能性があります。

また、この改正は、音楽ビジネスにも影響を及ぼします。例えば、著作権管理団体(JASRACなど)は、より長期間にわたって著作権料を徴収・分配することになります。レコード会社は、過去の音源の権利をより長く保持し、収益を上げることが可能になります。

今回の改正で注意すべき点は、映画の著作権は対象外であるということです。映画の著作権保護期間は、従来通り、公表後70年間と定められています。この違いは、映画の制作には多くの人々の関与が必要であり、権利関係が複雑であることなどが考慮された結果と考えられます。

今回の著作権保護期間の延長は、音楽業界にとって、長期的な視点で見ればどのような影響をもたらすのでしょうか?

長期的な視点で見ると、著作権保護期間の延長は、より多くの楽曲が商業的に利用される機会を減らす可能性があります。パブリックドメインとなる楽曲が減少することで、新たな創作活動の自由度が制限され、結果的に音楽文化の多様性を阻害する可能性も否定できません。

しかし、一方で、クリエイターの経済的な安定を支え、良質なコンテンツの制作を促進するという側面も重要です。著作権保護期間の延長は、クリエイターが安心して創作活動に専念できる環境を整備し、長期的に見れば音楽文化の発展に貢献する可能性も秘めています。

今後の課題は、今回の著作権法改正が、クリエイター、音楽ビジネス、そして社会全体にとって、どのような影響をもたらすのかを注意深く観察し、必要に応じてさらなる制度の見直しを行うことでしょう。

最終的には、著作権制度が、クリエイターの権利を保護しつつ、社会全体の文化的な発展に貢献できるよう、バランスの取れた制度設計が求められます。