韓国では料理を残すのは礼儀ですか？

韓国の食文化：料理を残すのは礼儀？変わりゆく食卓のマナー

韓国料理といえば、色とりどりのバンチャン（おかず）や熱々のチゲ、香ばしい焼肉など、食欲をそそる料理が豊富に思い浮かびます。しかし、これらの料理を前にした時、日本人には馴染みの薄い食文化に戸惑うこともあるかもしれません。その一つが、「料理を残すべきか否か」という問題です。

かつて、韓国では客人をもてなす際、料理を山盛りに提供することが美徳とされていました。客人側も、すべて食べきってしまうと「まだ食べられる」「もっと食べたい」という印象を与え、せっかくの好意を無にしてしまう可能性がありました。そのため、少し残すことで「十分にいただきました、ご馳走様でした」という感謝の気持ちを表すのが一般的でした。これは、日本における「ご飯茶碗に少しご飯を残す」という作法に似た、一種の遠慮の表現と言えるでしょう。特に年配の方々の中には、この考え方が根強く残っている方も少なくありません。

しかし、近年ではこの風潮にも変化が見られます。食料自給率の低い韓国では、食べ残しによる食品ロスが社会問題となっています。政府や民間団体による啓発活動も活発に行われ、「食べきれる量を注文する」「残さず食べる」という意識が高まりつつあります。特に若い世代を中心に、環境問題への関心も高まっていることから、食べ残しを恥ずかしい行為と捉える風潮も広がりつつあります。

レストランでも、以前のように大皿で料理を提供するスタイルから、 individual serving （個別提供）が増えてきています。これは、それぞれの適量に合わせて注文できるため、食べ残しを減らす効果が期待されています。また、食べ残しを持ち帰るための容器を提供する店も増え、「タッパー文化」という言葉も生まれています。

さらに、近年では「モッパン（먹방）」と呼ばれる、大量の料理を食べる様子をインターネットで配信する文化も流行しました。一見、食べ残しを助長するように思われがちですが、配信者の中には、食べ残しを避けるために工夫を凝らしたり、視聴者に食品ロス問題への意識向上を呼びかけたりする人もいます。モッパンを通じて、食に対する考え方や食文化の変化を垣間見ることができるでしょう。

もちろん、家庭での食事風景も変化しています。親世代は「たくさん食べなさい」と子供に料理を勧める傾向がありましたが、今では「食べきれる量だけ取りなさい」と教える親が増えています。学校給食でも、食べ残しを減らすための取り組みが積極的に行われています。

このように、韓国の食文化は時代とともに変化しています。料理を残すことが必ずしも礼儀違反とは限らず、状況や相手によって適切な対応が求められます。もし韓国で食事をする機会があれば、周りの人の様子を見ながら、臨機応変に対応するのが良いでしょう。相手への感謝の気持ちと、食品ロス削減への意識のバランスを大切に、韓国料理を楽しんでみてください。