Cider なんて読む？

「サイダー」なんて読む？ リンゴ酒と炭酸飲料の二つの顔を持つ言葉の謎

「サイダー」という言葉、皆さんはどのように読んでいますか？ 多くの方は「サイダー」とカタカナ読みしているのではないでしょうか。しかし、この「サイダー」には、実は二つの顔があることをご存知でしょうか？ 一つは、リンゴを発酵させて造られるアルコール飲料。もう一つは、炭酸ガスを含んだ、ノンアルコールの清涼飲料水です。この二つの「サイダー」、表記こそ同じでも、その中身、そして歴史的背景は大きく異なるのです。

まずは、アルコール飲料としての「サイダー」について見ていきましょう。英語では「cider」または「cyder」と表記され、特にイギリスやフランスなどヨーロッパ圏で古くから親しまれてきた伝統的な飲み物です。発酵によってリンゴの自然な甘みとアルコール分が生まれた、まさにリンゴ酒と言える存在です。 その味わいは、リンゴの種類や醸造方法によって大きく異なり、ドライで辛口のものから、甘くフルーティーなものまで、多様なバリエーションが存在します。 リンゴの豊かな香りと、ほのかな酸味、そしてアルコールのまろやかな風味は、多くの愛飲家を魅了し続けています。 イギリスの伝統的なパブでは、樽生サイダーが提供されることも多く、地元産のリンゴを使った地サイダーは、その土地ならではの風味を楽しめる、まさに「テロワール」を感じさせる存在と言えるでしょう。 近年では、クラフトサイダーと呼ばれる、小規模醸造所による個性豊かなサイダーも人気を集めています。これらは、特定のリンゴ品種を使用したり、独自の製法を取り入れるなど、より洗練された味わいを楽しめるものとなっています。

一方、日本で一般的に「サイダー」と呼ばれているのは、後者の、炭酸ガスを含んだノンアルコール飲料です。こちらは、リンゴ果汁をベースに、砂糖や香料などを加えて作られた、清涼飲料水です。 アルコール分を含まないため、子供から大人まで幅広い世代に親しまれており、夏の暑い日には特に人気があります。 この炭酸飲料としての「サイダー」は、英語圏では「apple cider」や「sparkling apple juice」などと呼ばれ、「cider」がアルコール飲料を指す場合とは区別されています。 しかし、日本ではこの区別があいまいになり、「サイダー」といえば、多くの場合、この炭酸飲料を指すのが一般的です。この違いは、言葉の伝来や、日本の飲料市場の状況、そして消費者の理解度など、様々な要因が絡み合っていると言えるでしょう。

このように、「サイダー」という一見単純な言葉の中に、全く異なる二つの飲み物が存在するのです。 「cider」という英語表記を理解し、文脈に応じてアルコール飲料か炭酸飲料かを判断する必要があります。 次に「サイダー」という言葉を耳にする時は、それがリンゴ酒なのか、それとも炭酸飲料なのか、少し意識して考えてみるのも面白いのではないでしょうか。 そして、機会があれば、それぞれの「サイダー」の味わいを比較してみるのも、新たな発見につながるかもしれません。 「サイダー」という一つの言葉が、いかに多様な側面を持つのか、改めて認識する事ができるでしょう。