事故で警察を呼ばなかった場合、慰謝料はもらえないのでしょうか？

事故で警察を呼ばなかった場合、慰謝料はもらえないのでしょうか？という疑問は、交通事故に限らず、様々な事故において多くの人が抱く不安でしょう。結論から言えば、警察を呼ばなかったとしても慰謝料請求は不可能ではありません。しかし、その成功率や請求できる慰謝料の額は、警察への届出の有無によって大きく左右されることを理解しておく必要があります。

警察への通報は、事故の客観的な証拠を確保する上で非常に重要な役割を果たします。警察官は現場の状況を写真や図面で記録し、目撃者の証言を聴取します。これらの記録は、事故の発生事実、加害者の特定、過失割合の判断といった、慰謝料請求において不可欠な要素を証明する強力な証拠となります。警察が作成した事故証明書は、裁判などにおいて重要な証拠資料として扱われます。

警察を呼ばなかった場合、これらの客観的な証拠が不足するため、事故の状況や責任の所在を立証することが困難になります。例えば、相手方が事故の責任を認めず、あなた自身の証言だけで主張を展開しなければならない状況に陥る可能性があります。当然、相手方にも言い分があり、双方の主張が真っ向から対立するケースでは、あなたの主張が認められる保証はありません。

特に、目撃者がいない、または相手方が事故の責任を全面的に否定するような状況では、警察への届出がないことで慰謝料請求が事実上不可能になる可能性も否定できません。相手方の保険会社も、警察への届出がないことを理由に、慰謝料支払いを拒否する可能性が高まります。 彼らは、客観的な証拠に基づいて損害賠償の可否を判断するからです。

ただし、警察を呼ばなかったからといって、絶対に慰謝料請求ができないわけではありません。 以下のような状況では、警察への通報がなくても、慰謝料請求の可能性は残されています。

• 相手方が事故の責任を明確に認めている場合: 相手方が事故責任を明確に認め、損害賠償の支払いを約束している場合、警察への通報がなくても、慰謝料請求は可能となる可能性が高いです。ただし、その約束を証拠として残しておくことが重要です。 例えば、メールや手紙、あるいは証人による証言などを確保しておきましょう。

• 明確な証拠が存在する場合: 事故現場の状況を捉えたドライブレコーダーの映像や防犯カメラの映像など、事故の状況を客観的に証明する証拠を確保している場合も、警察への通報がなくても慰謝料請求が可能となる可能性があります。

• 軽微な事故の場合: 擦り傷程度といった軽微な事故で、当事者間で示談が成立する場合、警察への通報は必ずしも必要ではありません。しかし、示談の内容を明確に文書化し、証拠として残しておく必要があります。

しかし、これらの例外的な状況を除けば、警察への通報は慰謝料請求を有利に進める上で極めて重要です。 事故に遭われた際は、たとえ軽微な事故であっても、まずは警察に通報することを強くお勧めします。 その後の慰謝料請求手続きにおいて、大きなアドバンテージとなるからです。 警察に通報することで、客観的な証拠を確保し、自分の権利を主張するための基盤を築くことができるのです。 迷った場合は、弁護士に相談して適切な対応を検討することも重要です。