ベトナムの主な死因は？

ベトナムにおける死因構造の変化：先進国型の課題と新たな脅威

ベトナムにおける死因の構造は、近年大きな変化を見せています。かつては感染症が主要な死因でしたが、経済発展と生活習慣の変化に伴い、慢性疾患、特に生活習慣病がその存在感を増しています。死亡原因のトップは脳卒中で、全死因の21.7%を占めており、これはベトナムにおける脳卒中対策の喫緊の必要性を示唆しています。

脳卒中に次いで、虚血性心疾患、癌、糖尿病といった生活習慣病が主要な死因として挙げられます。これらの疾患は、食生活の欧米化、運動不足、喫煙、飲酒といった生活習慣と密接に関わっており、ベトナムの社会経済状況の変化が人々の健康に大きな影響を与えていることがわかります。

特に、癌の種類別に見ると、肺がん、肝臓がん、胃がんなどが多く見られます。肺がんは喫煙率の高さと、大気汚染の影響が考えられます。肝臓がんは、B型肝炎やC型肝炎といったウイルス性肝炎の罹患率が高いことと、アルコールの過剰摂取が関連している可能性があります。胃がんは、塩分の多い食事や保存食品の摂取、ピロリ菌感染などがリスク因子として考えられています。

感染症も依然として無視できない存在です。結核やデング熱、HIV/AIDSなどの感染症は、特に農村部や低所得層において依然として深刻な問題です。これらの感染症は、衛生環境の改善や予防接種の普及によって減少傾向にあるものの、未だに死亡原因の一角を占めています。

さらに、近年では新たな脅威も出現しています。交通事故による死亡は、都市部における交通量の増加と、交通ルールの遵守意識の低さなどが原因で、深刻な社会問題となっています。また、自殺率も上昇傾向にあり、精神的な健康問題への対策も急務となっています。

ベトナムの死因構造の変化は、先進国型の医療構造への移行を示唆しています。しかし、感染症や交通事故、自殺といった課題も依然として残されており、これらの問題に対する包括的な対策が必要です。

今後は、生活習慣病の予防と早期発見のための取り組みを強化するとともに、感染症対策、交通事故対策、精神的な健康問題への対策を同時に進めていく必要があります。具体的には、健康教育の普及、医療アクセスの改善、交通インフラの整備、精神保健サービスの拡充などが挙げられます。

ベトナムが持続可能な発展を遂げるためには、国民の健康寿命の延伸が不可欠です。そのためには、死因構造の変化を的確に捉え、様々な課題に対する包括的な対策を講じることが重要です。