「承っております」は敬語ですか？

「承っております」は、まるで万能薬？ ビジネスシーンを円滑にする敬語の奥深さ

「承っております」という言葉、ビジネスシーンで耳にしない日はない、と言っても過言ではないでしょう。電話応対、メール、会議…あらゆる場面で飛び交うこの言葉ですが、改めて考えてみると、一体どのようなニュアンスを持ち、なぜこれほどまでに重宝されているのでしょうか。

一言で表すなら、「承っております」は相手への敬意と安心感を伝える、魔法のような敬語です。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、単に口にするだけでなく、その背景にある意味を理解することが重要です。

「承る」という謙譲語の力

「承っております」の中核をなすのは、動詞「承る」です。「承る」は「受ける」の謙譲語であり、相手からの依頼や要望を、へりくだって受け止める姿勢を示します。単に「受けました」と言うよりも、遥かに丁寧で、相手への敬意が伝わる表現と言えるでしょう。

さらに、「承っております」は、依頼や要望を受け止めるだけでなく、「責任を持って対応します」という意思表示も兼ね備えています。例えば、「〇〇の件、承っております」と言えば、相手は「ああ、ちゃんと伝わっているんだな」「安心して任せられるな」と感じるはずです。

「おります」が醸し出す安定感

「承る」に丁寧語の「おります」が付くことで、さらに安定感と信頼感が増します。「おります」は状態を表す補助動詞であり、依頼や要望を「受け止めている状態が継続している」ことを意味します。つまり、「承っております」は、「依頼を受け止めて、今もその状態を維持しています。ご安心ください」というメッセージを silently 発信しているのです。

状況に応じた使い分けの重要性

「承っております」は非常に便利な表現ですが、万能ではありません。状況によっては、より適切な表現を選ぶ必要があります。

• 緊急性の高い案件の場合： 「至急対応いたします」など、具体的な行動を示す言葉の方が、相手に安心感を与える場合があります。
• 依頼が複雑な場合： 単に「承っております」と言うだけでなく、「詳細を確認し、改めてご連絡いたします」など、具体的な対応策を伝える方が、より丁寧な印象を与えます。
• 社内での会話： あまりにも丁寧すぎると、慇懃無礼な印象を与えてしまう可能性もあります。「承知しました」や「了解しました」など、簡潔な表現の方が適切な場合もあります。

まとめ：「承っております」を使いこなして、円滑なコミュニケーションを

「承っております」は、単なる敬語ではなく、相手への敬意、責任感、安心感を伝えるための強力なツールです。その意味を深く理解し、状況に応じて適切な表現を使い分けることで、より円滑なコミュニケーションを築き、ビジネスシーンでの信頼感を高めることができるでしょう。

この言葉を、まるで万能薬のように濫用するのではなく、相手の立場に立って、心を込めて使うことこそが、「承っております」の真価を発揮させる秘訣なのです。