おサイフケータイは海外で使える？

おサイフケータイ、海外旅行の強い味方…にはまだなれない？ 現状と未来への展望

日本のキャッシュレス化を牽引してきたおサイフケータイ。電車に乗るのも、コンビニで買い物するのも、スマホをかざすだけで済むその手軽さは、もはや日常生活に欠かせないものとなっています。しかし、この便利な機能、海外旅行でも使えるのでしょうか？ 残念ながら、現実は「ほぼ使えない」と言わざるを得ません。この記事では、おサイフケータイの海外利用の現状と、その課題、そして未来への展望について解説します。

おサイフケータイの核となる技術はFeliCa（フェリカ）という非接触型ICカード技術です。SuicaやiD、QUICPay、楽天Edyといった電子マネーサービスはこのFeliCaをベースに構築されています。しかし、このFeliCa、世界的にはあまり普及していません。世界標準となっているのはTypeA/Bと呼ばれるNFC規格であり、おサイフケータイで採用されているTypeFは日本独自の規格に近い存在です。

そのため、たとえ海外の店舗にNFC対応の端末が設置されていても、TypeFに対応していなければおサイフケータイは利用できません。香港やインドネシアなど一部地域で利用できるケースもありますが、これはあくまで例外的なもので、世界的に見れば対応エリアは非常に限られています。

では、なぜFeliCaは世界標準になれなかったのでしょうか？ 一つは、FeliCaが開発された当時、日本の携帯電話市場はガラパゴス化が進み、独自の進化を遂げていたことが挙げられます。FeliCaはその流れの中で発展した技術であり、グローバルスタンダードを意識した開発は二の次だったと言えるかもしれません。

もう一つは、セキュリティ性の高さです。FeliCaは高度な暗号化技術を採用しており、セキュリティ面では非常に優れています。しかし、その反面、システム構築のコストが高く、導入のハードルが高いというデメリットも抱えています。海外展開を考えた場合、コスト面での不利は無視できない要素でした。

しかし、諦めるのはまだ早いです。近年、訪日外国人の増加に伴い、日本国内でFeliCa対応のニーズが高まっていることから、一部の国際ブランドカードがFeliCaを搭載したクレジットカードを発行し始めています。また、モバイル決済サービスの普及も追い風となっています。Apple PayやGoogle Payといったサービスは、FeliCaに対応することで日本市場への参入を果たしました。

さらに、将来的には、クラウド技術を活用した新たな決済システムの登場も期待されています。スマートフォンに搭載されたセキュアエレメントではなく、クラウド上で決済処理を行うことで、端末の種類や規格に依存しない、より柔軟な決済システムが実現できる可能性があります。

おサイフケータイが真の意味で「海外旅行の強い味方」となるためには、まだ多くの課題を克服する必要があります。しかし、技術の進歩や市場の変化は、常に新たな可能性を生み出しています。近い将来、世界中でスマホをかざすだけで決済できる日が来るかもしれません。その時、おサイフケータイは、日本のキャッシュレス化を牽引しただけでなく、世界を繋ぐ架け橋となる存在になっているかもしれません。