ディーゼル車は灯油でも走れますか?

1 ビュー

ディーゼルエンジンは軽油の潤滑性能に依存して設計されています。軽油はエンジン内部の部品を適切に潤滑しますが、灯油は潤滑性が非常に低いため、ディーゼルエンジンにそのまま使用すると部品の摩耗や故障につながる可能性があります。灯油を燃料として使用するには、潤滑性を向上させる添加剤などの対策が必要です。

コメント 0 好き

ディーゼル車は灯油で本当に走れるのか? – 知っておくべきリスクと現実

ディーゼルエンジンは、その燃費の良さと耐久性から、トラックやバスなどの大型車両、そして一部の乗用車に広く採用されています。燃料として一般的に使用されるのは軽油ですが、「灯油でも走るのではないか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。結論から言えば、理論上は可能ですが、推奨はできません。深刻なリスクを伴います。

その理由を深く掘り下げてみましょう。

1. 潤滑性の問題:ディーゼルエンジンの生命線

ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと異なり、燃料噴射ポンプやインジェクターといった精密部品を極めて高い圧力で動作させます。これらの部品は、燃料自体が持つ潤滑性によって摩耗を防いでいます。軽油は、この潤滑性能に優れており、エンジン内部の部品をスムーズに動かす役割を担っています。

一方、灯油は軽油に比べて潤滑性が極端に低いのです。灯油をディーゼルエンジンに使用すると、燃料噴射ポンプやインジェクターなどの部品が十分に潤滑されず、金属同士が直接接触し、摩耗が急速に進みます。これは、エンジンの焼き付きや故障に直結する重大な問題です。

2. セタン価の低下:燃焼効率の悪化

ディーゼルエンジンの燃焼効率を測る指標の一つに「セタン価」があります。セタン価が高いほど、着火性が良く、安定した燃焼を実現できます。軽油は、ディーゼルエンジンに適したセタン価を持っていますが、灯油は軽油よりもセタン価が低いため、燃焼効率が悪化します。

燃焼効率の悪化は、出力低下や燃費悪化だけでなく、黒煙の発生やエンジンノッキングの原因にもなります。また、未燃焼の燃料が増加し、排気ガス中の有害物質が増加する可能性もあります。

3. 法規制:軽油引取税の問題

灯油を燃料として使用する場合、法的な問題も考慮する必要があります。日本では、軽油には軽油引取税が課せられていますが、灯油には課せられていません。そのため、灯油をディーゼル車の燃料として使用することは、脱税行為とみなされる可能性があります。

4. 添加剤による対策は万全ではない

灯油に潤滑性を向上させる添加剤を混ぜて使用するという方法も存在しますが、添加剤の種類や添加量によっては、十分な効果が得られない場合があります。また、添加剤を使用しても、セタン価の低下や燃焼効率の悪化といった問題は完全に解消されるわけではありません。

まとめ:リスクを理解した上で判断を

ディーゼル車は、緊急時など、やむを得ない状況下であれば、灯油で一時的に走行できる可能性はあります。しかし、それはあくまで緊急手段であり、日常的に灯油を使用することは絶対に避けるべきです。エンジンの寿命を著しく縮めるだけでなく、法的な問題にも発展する可能性があります。

ディーゼルエンジンは、軽油を使用するように設計されており、それが最も安全で効率的な方法です。愛車を長く大切に乗り続けるためには、指定された燃料を使用し、適切なメンテナンスを行うことが重要です。どうしても代替燃料の使用を検討する必要がある場合は、専門家への相談を強く推奨します。