地下鉄にパンタグラフがないのはなぜですか?

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地下鉄銀座線は、トンネルの断面を小さくすることで建設コストを抑えるため、パンタグラフを使用していません。地上電車と異なり、限られた空間で効率性を追求する必要がある地下鉄では、この設計が不可欠です。そのため、第三軌条集電方式を採用し、車両の高さを抑え、トンネルの小型化を実現しています。

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地下鉄にパンタグラフがない理由:空間との戦い

東京の地下を縦横に走る地下鉄。その車体を見上げても、地上を走る電車で見慣れたパンタグラフの姿はありません。一体なぜでしょうか?その答えは、地下鉄という特殊な環境と、空間を最大限に活用しようとする技術者の工夫に隠されています。

地下鉄建設において最大の課題となるのが、その名の通り「地下」という空間の制約です。地上とは異なり、地下空間は限られており、大規模な掘削工事には莫大な費用と時間がかかります。そこで、少しでも建設コストを抑えるため、初期の地下鉄路線である銀座線では、トンネルの断面を極力小さくする設計が採用されました。

しかし、トンネル断面を小さくすると、今度は車両のサイズにも制限がかかります。特に、架線から電気を供給するためのパンタグラフは、その高さゆえに車両全体を大きくしてしまう要因となります。そこで銀座線では、パンタグラフに代わる集電方式として、第三軌条方式を採用しました。

第三軌条方式とは、線路とは別に地面に設置されたレール(第三軌条)から電気を供給する方式です。この方式では、車両の屋根にパンタグラフを設置する必要がなく、車両の高さを抑えることができます。結果として、トンネル断面を小さくすることができ、建設コストの削減に大きく貢献しました。

その後建設された地下鉄路線でも、銀座線の成功例を受け継ぎ、第三軌条方式を採用するケースが多く見られます。これは、単に建設コストの面だけでなく、限られた地下空間を有効活用するという観点からも理にかなっています。

もちろん、第三軌条方式にもデメリットは存在します。例えば、第三軌条が露出しているため、感電のリスクがあることや、地上区間との相互乗り入れが難しいことなどが挙げられます。しかし、これらのデメリットを上回るメリットが、地下鉄という特殊な環境においては重要視されてきたと言えるでしょう。

技術の進歩により、近年ではパンタグラフを使用しながらも車両の高さを抑えた地下鉄も登場しています。しかし、初期の地下鉄路線が採用した、空間を最大限に活用しようとする工夫は、現代の地下鉄にも脈々と受け継がれています。次に地下鉄に乗る機会があれば、その車体や線路にも目を向けてみて下さい。そこには、先人の知恵と工夫が凝縮されているはずです。