「しっていただく」は敬語ですか？

「知っている」ではなく「しっていただく」？敬語表現の落とし穴

「知っている」をより丁寧に言おうとして「しっていただく」を使ったことはありませんか？実は、これは誤った敬語の使い方で、ビジネスシーンなどでは相手に不快感を与えてしまう可能性があります。本記事では、「しっていただく」がなぜ適切でないのか、そして正しく敬意を表す表現方法について解説します。

「いただく」は謙譲語の一種で、自分が動作の恩恵を受ける際に用います。例えば、「教えていただく」「見ていただく」などは、相手からの行為によって自分が利益を得ることを表しており、適切な謙譲語です。しかし、「知っている」という行為は、情報を得ているのは自分自身であり、相手が何かをしてくれるわけではありません。つまり、「知っている」という行為自体に相手からの恩恵は存在しないのです。

「しっていただく」を直訳すると、「自分に知らせていただく」となります。これは、まるで相手が自分に知識を与えてくれるかのようなニュアンスを含んでしまい、実際には相手が何もしていないにもかかわらず、恩恵を受けているかのような錯覚を生み出します。このため、相手によっては「上から目線」と感じたり、不自然な表現だと捉えられてしまう可能性があります。

では、どのように「知っている」を敬語で表現すれば良いのでしょうか？状況によっていくつかの方法があります。

1. 「存じております」を使う

「存じる」は「知っている」の謙譲語で、最も一般的な敬語表現です。ビジネスシーンはもちろん、フォーマルな場面でも広く使えます。「〇〇の件はすでに存じております」のように使えば、相手に失礼なく、知識を持っていることを伝えられます。

2. 「承知しております」を使う

「承知する」も「知っている」「理解している」の謙譲語です。特に、相手から伝えられた内容を理解していることを示したい場合に適しています。「ご説明いただいた内容は承知しております」のように使えば、相手の話にしっかりと耳を傾けていることを示すことができます。

3. 「把握しております」を使う

「把握する」は、物事をしっかりと理解し、自分の知識として持っていることを意味します。やや硬い印象を与えるため、ビジネスシーンでよく使われます。「現状は把握しております」のように使えば、状況を理解していることを簡潔に伝えることができます。

4. 「〜とのこと、承知しております」と情報を付け加える

「〜とのこと」を付け加えることで、情報の出所を明確にし、謙虚な姿勢を示すことができます。例えば、「〇〇様から〜とのこと、承知しております」のように使えば、情報源への敬意も示すことができます。

5. 状況に応じて「〜と聞いております」を使う

伝聞の情報であることを明確にしたい場合、「〜と聞いております」も有効な表現です。 これは謙譲語ではありませんが、情報の出所を明示することで、誤解を防ぎ、丁寧な印象を与えます。

このように、「知っている」を敬語で表現する方法はいくつかあります。重要なのは、相手への敬意を忘れず、適切な表現を選ぶことです。「しっていただく」のような誤った敬語を使うことは避け、TPOに合わせた適切な敬語を使い分けることで、より円滑なコミュニケーションを築きましょう。 誤った敬語は、丁寧なつもりでかえって失礼になってしまうこともあるため、正しい使い方を理解することが重要です。