徳島出身の医師が多い理由は何ですか？

徳島県出身の医師が多い、という認識は、必ずしも正確ではありません。むしろ、近年は医師不足が深刻な地域の一つとして挙げられることが多いです。 確かに、かつては「徳島出身の医師が多い」という印象を持たれていた時期もあったかもしれませんが、それは人口規模や医学部を持つ大学の存在など、いくつかの要因が複雑に絡み合った結果であり、単純に「徳島県民は医師になる人が多い」と断言することはできません。

徳島大学医学部の存在は、徳島県における医師養成において重要な役割を担っていることは間違いありません。しかし、先に述べたように、同大学の卒業生の多くは県外へ流出しており、徳島県に残って医療に従事する医師の割合は決して高いとは言えません。 むしろ、県外からの医師の流入が、徳島県の医療を支えている現状があると言えるでしょう。

では、なぜ「徳島出身の医師が多い」という印象が過去に存在したのか、そして現在、医師不足に悩むに至ったのかを考察してみましょう。

一つ目の要因として考えられるのは、以前は地方の医学部卒業生が、出身地周辺で医療に従事することが一般的であったという点です。 交通手段の発達や情報伝達手段の進化が限定されていた時代、地元に残り、地域医療に貢献することは、自然な流れでした。徳島大学医学部も、県内出身者にとって身近な存在であり、卒業後に地元で開業する医師も一定数いたと考えられます。

しかし、現代においては、医師のキャリアパスは多様化しています。都市部への就職を希望する医師も多く、高度な医療技術を習得できる大規模病院や、専門性の高い医療機関への志向が強まっているため、徳島大学医学部を卒業しても、県外への就職を選択する医師が増加しています。

さらに、徳島県は高齢化が進む地域であり、人口減少も深刻な問題となっています。そのため、医師の絶対数が不足しているだけでなく、特に高齢者医療を担う医師の確保が喫緊の課題となっています。 高齢化に伴う慢性疾患の増加、医療ニーズの高まり、そして医師の高齢化も相まって、医療提供体制の維持はますます困難になっていると言えるでしょう。

徳島大学医学部に入学する県外出身者の多さも、複雑な状況を反映しています。 地方の医学部では、県外からの受験生を受け入れることで学生数を確保し、教育の質を維持する必要性があります。 しかし、県外出身者が卒業後、徳島県に残る割合が低いという現状は、県内出身者だけで医師不足を解消することは困難であることを示しています。

今後、徳島県が医師不足を解消し、地域医療を維持していくためには、県外からの医師の積極的な誘致、そして若手医師の定着促進策が不可欠です。 魅力的な勤務環境の整備、生活環境の改善、そして地域医療への理解促進など、多角的な取り組みが必要となります。単に「徳島出身の医師が多い」という過去の印象にとらわれることなく、現実的な問題に向き合い、具体的な対策を講じていくことが求められています。