舞台 上手側 どっち？

舞台の「上手」「下手」：知っておくとちょっと面白い舞台の裏側

舞台芸術、特に演劇や歌舞伎などを鑑賞する際に、よく耳にする言葉に「上手（かみて）」と「下手（しもて）」があります。これは舞台を客席から見たときの左右を表す言葉で、舞台に向かって右側が「上手」、左側が「下手」です。一見単純な言葉ですが、その背後には舞台の歴史や演出の意図が隠されており、知っておくと舞台鑑賞がより一層深みを増します。

単なる方向ではない、意味の深さ

「上手」「下手」は単なる左右を示す言葉以上の意味を持っています。それは、舞台における登場人物や背景の重要性、権力関係などを暗に示す役割を担っているのです。伝統的に、舞台上では「上手」が上位、「下手」が下位とされてきました。これは、かつて舞台が貴族や権力者のために上演されることが多かった時代背景に由来すると考えられています。

舞台演出における「上手」「下手」の活用

この「上手が上位」という概念は、舞台演出に様々な形で反映されています。

• セットの配置: 例えば、時代劇などで武家屋敷を舞台にする場合、格式の高い座敷は上手側に、使用人の控え室や玄関は下手側に配置されることが多いです。これにより、視覚的に身分の違いを表現し、観客に物語の背景を理解させやすくしています。
• 役者の立ち位置: 主人公や重要な登場人物は、より上位である上手側に立つことが多いです。特に、登場人物同士の関係性を示す際に、立ち位置は重要な役割を果たします。例えば、目上の人物が上手に、目下の人物が下手に立つことで、二人の力関係を明確に表現することができます。
• 動きの演出: 登場人物の動きも、上手に重点が置かれることがあります。例えば、主人公が何かを決意して行動を起こす際に、下手から上手へと移動することで、物語の展開を強調することができます。

歌舞伎における「上手」「下手」

歌舞伎においては、「上手」「下手」の概念がより顕著に表れます。特に、「花道」と呼ばれる舞台から客席へと伸びる通路は、役者が登場・退場する重要な場所ですが、これもまた「上手」「下手」の概念と深く結びついています。一般的に、花道を上手から登場する役者は、より重要な役割を担っていることが多いとされます。

現代演劇における「上手」「下手」

現代演劇においても、「上手」「下手」の概念は必ずしも絶対的なものではありませんが、演出家は意図的に活用することがあります。従来のルールをあえて覆すことで、新たな解釈やメッセージを観客に伝えることも可能です。

「上手」「下手」を知って、舞台をより深く楽しむ

舞台を鑑賞する際に、「上手」「下手」という言葉の意味を意識することで、登場人物の心情や物語の背景をより深く理解することができます。演出家の意図を読み解きながら、舞台芸術の奥深さを味わってみてください。次回舞台を観劇する際には、ぜひ「上手」「下手」に着目し、新たな発見を楽しんでみてください。きっと、いつもとは違った視点で舞台を楽しめるはずです。