のぞみが静岡に止まらない理由は何ですか?

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のぞみが静岡駅を通過するのは、東京、名古屋、新大阪という巨大市場を最速で結ぶという使命が優先されるためです。静岡県は停車を求めていますが、速達性を重視するJR東海の判断により、現在の運行形態となっています。

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なぜ「のぞみ」は静岡に止まらないのか? その背景にある複雑な事情

東海道新幹線の速達列車「のぞみ」。その速さは、日本の経済活動を支える大動脈として、なくてはならない存在です。しかし、その一方で、静岡県民にとって「のぞみ」は、どこか遠い存在でもあります。なぜなら、ほとんどの「のぞみ」が静岡県内の駅に停車しないからです。

この背景には、単に「JR東海が意地悪をしている」といった単純な理由だけでなく、日本の新幹線を取り巻く複雑な事情が絡み合っています。

1. 速達性という至上命題:

「のぞみ」の最大の使命は、東京、名古屋、新大阪という三大都市圏を、可能な限り短い時間で結ぶことです。停車駅を増やせば増やすほど、所要時間は長くなり、速達性という「のぞみ」の存在意義が薄れてしまいます。JR東海は、この速達性を維持するために、停車駅を厳選せざるを得ない、という立場です。

2. 静岡県内の特異な地形:

静岡県は、東西に長く、山地が県土の大部分を占めています。そのため、県庁所在地である静岡市をはじめ、主要都市が東海道本線沿いに点在しており、新幹線の駅間距離が比較的短いという特徴があります。各駅に「のぞみ」を停車させてしまうと、他の駅への影響も無視できず、全体的な速達性が大きく損なわれてしまう可能性があります。

3. 「ひかり」「こだま」の役割分担:

東海道新幹線には、「のぞみ」の他に「ひかり」「こだま」という列車種別が存在します。「ひかり」は、「のぞみ」ほどではないにしろ速達性を重視し、主要都市を中心に停車します。「こだま」は、各駅停車であり、地域の足としての役割を担っています。JR東海は、この3つの列車種別を適切に配置することで、速達性と地域への利便性を両立させようと努力しています。つまり、「のぞみ」が止まらない分、「ひかり」「こだま」が静岡県内の駅に多く停車することで、バランスを取っているという考え方です。

4. 静岡県からの根強い要望と、JR東海の葛藤:

静岡県は長年にわたり、「のぞみ」の停車をJR東海に要望し続けています。県民の利便性向上はもちろん、観光振興や地域経済の活性化といった効果も期待しているからです。しかし、JR東海は、前述した理由から、停車駅の増加には慎重な姿勢を崩していません。近年では、一部の臨時列車で静岡駅に「のぞみ」が停車するなどの動きも見られますが、抜本的な解決には至っていません。

5. リニア中央新幹線の影響:

現在建設が進められているリニア中央新幹線は、品川から名古屋までを最短40分で結ぶことを目指しています。このリニアが開通すれば、東海道新幹線の役割分担も大きく変化する可能性があります。例えば、「のぞみ」がリニアにその役割を譲り、東海道新幹線はより地域輸送に特化する、という未来も考えられます。

「のぞみ」が静岡に止まらない理由は、単にJR東海の方針だけでなく、日本の新幹線を取り巻く様々な事情が複雑に絡み合っている結果です。今後、リニア中央新幹線の開通などにより、この状況がどのように変化していくのか、注視していく必要があるでしょう。