タクシーは距離が近いことを理由に乗車拒否する？

タクシーは「近距離」を理由に乗車拒否する？そのグレーゾーンと、知っておくべきこと

タクシーに乗ろうとした際、「近距離だから」という理由で露骨に乗車拒否された、もしくはそれに近い対応をされた経験がある方もいるかもしれません。法律上、明確な理由なく乗車を拒否することは原則禁止されています。しかし、現実には様々な状況が絡み合い、一概に乗車拒否と断定できない、いわば「グレーゾーン」が存在するのも事実です。

まず、大前提として、タクシーはメーター料金で運行されるため、短距離であっても料金が発生します。運転手にとって、近距離の客は「儲けが少ない」と判断される可能性はありますが、それだけで正当な乗車拒否理由にはなりません。

では、なぜ「近距離だから」と感じられるような対応が起こるのでしょうか？考えられる理由として、以下のような点が挙げられます。

• 時間帯と需要: 特にラッシュ時や終電後など、タクシーの需要が高い時間帯には、運転手はより長距離の客を優先したいと考える傾向があります。特に、駅などで待機している場合、すぐに次の客を乗せられる見込みが高いため、近距離の客よりも、長距離を希望する客を待ちたい心理が働くのは自然なことです。
• 天候: 雨天時や悪天候時も、同様にタクシーの需要が高まります。そのため、運転手はより効率的に稼ぐため、長距離の客を優先する可能性があります。
• 交通状況: 渋滞が酷い場所や時間帯では、近距離であっても時間がかかるため、運転手は乗車をためらうことがあります。特に、目的地が一方通行の多い場所や、Uターンが難しい場所にある場合、その傾向は強まります。
• 運転手の個人的な事情: 疲労や体調不良など、運転手の個人的な事情も影響する可能性があります。特に、長距離を運転する体力がない場合、近距離の客を優先するかもしれません。しかし、これはあくまで個人的な事情であり、乗車拒否の正当な理由にはなりません。

これらの状況下で、運転手は「ちょっと待ってください」「他に長距離のお客さんを探しているので」など、遠回しな表現で乗車を促さない場合があります。これは、明確な乗車拒否とは言えないものの、客側からすると「近距離だから乗せてくれないのか」と感じてしまう状況です。

このような状況に遭遇した場合、まずは冷静に目的地と距離を伝え、乗車可能かどうか確認することが大切です。それでも曖昧な態度を取られた場合は、タクシー会社名と運転手の名前を控え、後日タクシー会社に状況を説明することで、改善を求めることができます。

また、最近ではタクシー配車アプリの利用が一般的になってきています。アプリでは、事前に目的地を入力するため、運転手は距離を確認した上で配車を受け入れるかどうか判断できます。そのため、近距離での乗車を希望する場合は、アプリを利用することで、乗車拒否のリスクを減らすことができます。

「近距離だから」という理由でタクシーに乗車できない、と感じる経験は、誰にとっても不快なものです。しかし、法律や制度だけでなく、タクシー運転手の置かれた状況や心理も理解することで、よりスムーズにタクシーを利用できるかもしれません。そして、もし不当な乗車拒否に遭遇した場合は、泣き寝入りせずに、然るべき対応を取ることが重要です。