大雨でバスが止まる基準は？

大雨でバスが止まる基準は、明確な数値で一律に定められているわけではありません。これは、バス運行の安全性を確保する上で、風速だけでなく、雨量、路面状況、バスの車種、運行ルートの状況など、様々な要素を総合的に判断する必要があるためです。単なる風速の数値だけで判断するのは、非常に危険であり、事故につながる可能性も否定できません。

風速25m/s以上を運行見合わせ基準とする意見があることは事実です。これは、強風による転倒や横転のリスクを考慮したものでしょう。しかし、この数値はあくまで目安であり、実際の運行判断においては、それを超える要素が数多く存在します。例えば、風速が20m/sに満たなくても、突風や瞬間的な強風がバスの運転に危険を及ぼす可能性は十分にあります。特に、大型バスは風の影響を受けやすく、横風による不安定な走行は、乗客の安全を脅かす重大なリスクとなります。

NEXCOの高速道路通行止め基準（平均風速20m/s超）も参考にされることがありますが、高速道路と一般道路では路面状況や周囲の環境が大きく異なります。高速道路では比較的平坦な路面が多い一方、一般道路では急な坂道やカーブ、狭い道路幅、歩行者や自転車との接触リスクなど、考慮すべき要素が複雑に絡み合っています。よって、高速道路の基準をそのままバス運行に適用することはできません。

雨量に関しても、降水量が多いほど路面状況が悪化し、視界不良による事故リスクが増大します。特に、瞬間的に集中豪雨に見舞われた場合、道路に冠水が発生したり、マンホールが浮き上がったりする危険性があり、バスの走行は非常に困難になります。路面が冠水している状況では、バスのタイヤがスリップしやすくなり、制御不能に陥る可能性もあります。また、視界不良によって、前方の状況把握が困難となり、追突事故のリスクも高まります。

さらに、バスの車種も運行判断に影響を与えます。大型バスは小型バスに比べて風の影響を受けやすく、路面状況の変化にも敏感です。そのため、同じ天候状況下であっても、大型バスの方が運行中止となる可能性が高くなります。

運行ルートも重要な判断材料です。山間部や急勾配の道路、橋梁など、危険箇所が多いルートでは、より慎重な判断が必要となります。また、道路の保守状況も考慮しなければなりません。路面の凹凸や破損は、バスの走行に影響を与え、事故リスクを増大させる可能性があります。

以上のことを踏まえると、大雨時のバス運行判断は、風速、雨量、路面状況、バスの車種、運行ルート、道路状況などを総合的に判断し、安全を最優先する必要があります。明確な数値基準を設けることは困難ですが、安全管理責任者は、常に最新の気象情報を入手し、状況に応じて迅速かつ的確な判断を行うことが求められます。そのために、最新の気象情報システムや道路状況把握システムの活用、そして、運転手の経験と知識を最大限に活かす体制が不可欠です。最終的には、乗客の安全を確保するための、柔軟かつ迅速な判断こそが重要なのです。