ビフィズス菌は産道から受け継がれますか？

ビフィズス菌は本当に産道から受け継がれるのか？ 最新研究が示す意外な事実

「赤ちゃんは産道を通る際に、母親の腸内細菌を受け継ぎ、それが生涯の健康を左右する」

かつて、この説は広く信じられていました。特にビフィズス菌は、生まれたばかりの赤ちゃんの腸内に最も多く存在する善玉菌であり、免疫機能の向上や消化吸収のサポートに重要な役割を果たすと考えられているため、産道感染によって母親から受け継がれる、というのが定説でした。

しかし、近年、腸内細菌の研究は飛躍的に進歩し、従来の考え方を覆すような新たな発見が相次いでいます。

2018年に発表された日本の研究は、まさにその好例です。この研究では、日本人家族の腸内細菌叢を詳細に解析した結果、ビフィズス菌は母親からだけではなく、父親や配偶者など、家族間でも伝播する可能性が示唆されました。つまり、赤ちゃんがビフィズス菌を獲得する経路は、産道感染だけではない可能性があるのです。

この研究結果は、従来の「産道感染説」に一石を投じました。では、一体どのようにしてビフィズス菌は家族間で伝播するのでしょうか？

考えられる経路はいくつかあります。

• 接触: 日常的なスキンシップや抱っこ、キスなどを通じて、皮膚や唾液に付着したビフィズス菌が伝播する可能性があります。
• 環境: 家族が共有する生活空間（家庭内の空気、ドアノブ、食器など）にもビフィズス菌が存在し、間接的に伝播する可能性があります。
• 食生活: 家族が共通の食事を摂ることで、食品に含まれるビフィズス菌が伝播する可能性も考えられます。

もちろん、母親からの産道感染も、ビフィズス菌獲得の重要な経路の一つであることは否定できません。しかし、近年では、帝王切開で生まれた赤ちゃんでも、自然分娩で生まれた赤ちゃんと同じようにビフィズス菌が定着することがわかっています。これは、産道感染以外の経路も重要であることを示唆しています。

今後の研究では、ビフィズス菌の伝播経路をより詳細に解明し、家族間の腸内細菌叢の相互作用を理解することが重要です。そして、その知見を活かして、赤ちゃんだけでなく、家族全体の腸内環境を改善し、健康増進に繋げていくことが期待されます。

「産道感染説」に固執するのではなく、最新の研究成果を踏まえ、多様な角度から腸内細菌叢の謎に迫っていくことが、私たちの健康な未来を拓く鍵となるでしょう。