老年期の体温の正常値はいくつですか？

高齢者の体温：知っておくべきこと – なぜ低いのか、測り方、注意点

「熱が出たかも…」と体温計を手に取ることは誰でも経験があるでしょう。しかし、高齢者の方の場合、体温に関する知識は少し違った視点が必要です。なぜなら、高齢者の体温は若い世代とは異なり、一定の範囲内で変動しやすい特徴があるからです。

この記事では、高齢者の体温の正常値、体温が低くなる理由、適切な体温測定方法、そして注意すべき点について解説します。

高齢者の体温：正常値の目安は？

一般的に、成人の平均体温は36.5℃～37.2℃程度とされています。しかし、記事冒頭でも触れたように、高齢者の場合、平均体温はやや低くなる傾向があります。

複数の研究を総合的に見ると、高齢者の平熱は36.0℃～37.0℃程度が目安となります。ただし、個人の基礎体温や生活習慣によって異なるため、日頃から自身の平熱を把握しておくことが重要です。

なぜ高齢者の体温は低くなりやすいのか？

高齢者の体温が低くなりやすいのには、いくつかの要因が考えられます。

• 基礎代謝の低下: 年齢とともに筋肉量が減少し、基礎代謝が低下します。これは、体を温めるエネルギーの産生量が減ることを意味します。
• 体温調節機能の低下: 自律神経系の機能が低下し、体温を適切に維持する能力が低下します。これにより、寒さを感じにくくなったり、暑さを感じにくくなったりすることがあります。
• 血管の収縮反応の低下: 血管が収縮しにくくなるため、体温を保持する機能が低下します。
• ホルモンバランスの変化: 加齢に伴い、甲状腺ホルモンなど、体温調節に関わるホルモンの分泌量が変化することがあります。
• 薬剤の影響: 一部の薬剤（降圧剤、精神安定剤など）は、体温を下げる副作用を持つ場合があります。

適切な体温測定方法

高齢者の体温測定は、以下の点に注意して行うことが大切です。

• 測定部位: 腋窩（わきの下）、口腔、直腸など、さまざまな測定部位がありますが、一般的には腋窩での測定が簡便です。
• 測定時間: 正確な測定のため、電子体温計の場合は音が鳴ってからさらに1分程度、水銀体温計の場合は5分以上測定しましょう。
• 測定環境: 室温が低い場合は、暖房器具で部屋を暖めてから測定しましょう。
• 測定時間帯: 体温は一日の中でも変動するため、できるだけ同じ時間帯に測定するようにしましょう。
• 体温計の選択: 正確に測定できる体温計を選びましょう。耳式体温計は簡便ですが、測定誤差が生じやすい場合があります。

注意すべき点

高齢者の場合、平熱が低いことに加え、体温上昇の幅が小さくなる傾向があります。つまり、若い世代であれば38℃以上の発熱となる状態でも、高齢者では37℃台程度の微熱にとどまることがあります。

そのため、以下の点に注意が必要です。

• わずかな体調の変化も見逃さない: 食欲不振、倦怠感、元気がないなど、普段と異なる様子が見られた場合は、体温だけでなく、全身の状態を注意深く観察しましょう。
• 感染症の初期症状に注意: 高齢者は免疫力が低下しているため、感染症にかかりやすい傾向があります。咳、鼻水、喉の痛みなど、感染症の初期症状に注意しましょう。
• 脱水症状に注意: 脱水症状は体温調節機能を低下させる可能性があります。こまめな水分補給を心がけましょう。
• 定期的な健康診断: 定期的な健康診断を受け、基礎疾患の管理を行いましょう。

まとめ

高齢者の体温は、若い世代とは異なり、低めであることが一般的です。しかし、体温が低いからといって必ずしも異常とは限りません。日頃から自身の平熱を把握し、わずかな体調の変化も見逃さないようにすることが大切です。もし、体温や体調について気になることがあれば、早めに医療機関を受診しましょう。