在来線の最大勾配は?

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日本の在来線で最も急な勾配は、粘着式鉄道では箱根登山鉄道の80パーミル、JR線では飯田線の40パーミルです。箱根登山鉄道の急勾配は、山岳地帯を走るために必要なもので、スイッチバックなどの特殊な運転方法も採用されています。

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日本の在来線、急勾配を駆け上がる技術

日本の鉄道は、その精緻な運行システムと広範な路線網で世界に知られています。平野部を高速で駆け抜ける新幹線のイメージが強い一方で、山岳地帯を縫うように走る在来線も数多く存在し、そこには急勾配を克服するための様々な工夫が凝らされています。

一般的に、鉄道の勾配はパーミル(‰)という単位で表され、1000メートル水平に進むごとに何メートル高くなるかを示します。例えば、10パーミルは1000メートル進むごとに10メートル上昇することを意味します。日本の在来線における最大勾配は、粘着式鉄道(車輪とレールの摩擦力だけで走行する一般的な鉄道)の場合、箱根登山鉄道の80パーミルが有名です。これは、1000メートル進むごとに80メートルも上昇するという、極めて急な勾配です。

箱根登山鉄道は、箱根湯本から強羅まで、標高差約400メートルを登る山岳鉄道です。この急勾配を克服するために、3か所のスイッチバックが設けられています。スイッチバックとは、列車が進行方向を変えてジグザグに斜面を登っていく運転方法です。列車は一定区間を登ると、停車して進行方向を切り替え、再び登り始めるという動作を繰り返すことで、急勾配を少しずつ登っていきます。この独特の走行風景は、箱根登山鉄道の魅力の一つとなっています。さらに、強力なモーターを搭載した車両や、レールと車輪の摩擦力を高めるための砂撒き装置なども採用されており、安全な運行を支えています。

JR線における最大勾配は、飯田線の40パーミルです。飯田線は、長野県と愛知県を結ぶ全長195.7kmの長大路線で、中央アルプスと南アルプスに挟まれた険しい地形を走ります。急勾配区間以外にも、多くのトンネルや鉄橋が連続する難所が点在し、「秘境駅」で知られる駅も多いことから、鉄道ファンに人気の路線です。この40パーミルの勾配は、JR線の中でも屈指の急勾配であり、強力なモーターを搭載した車両が運用されています。

これらの急勾配路線は、山岳地帯に住む人々にとって貴重な交通手段であると同時に、日本の鉄道技術の高さを示す象徴でもあります。急勾配を安全に走行するための技術は、車両の性能向上だけでなく、線路の保守管理や運転士の熟練した技術など、様々な要素が組み合わさって実現されています。

近年では、環境保護の観点から、鉄道が見直されています。自動車に比べてCO2排出量が少ない鉄道は、持続可能な社会の実現に貢献する重要な交通手段です。山岳地帯においても、道路の建設や維持管理には環境への負荷が大きいため、鉄道の役割は今後ますます重要になっていくと考えられます。日本の鉄道技術は、急勾配を克服するだけでなく、環境負荷を低減しながら人々を安全に目的地へと運ぶ、未来の交通システムを支える重要な役割を担っていると言えるでしょう。