エビチリは中華料理ではない?

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エビチリは長年中華料理と信じられてきましたが、実際は日本で生まれた料理です。四川飯店の陳建民氏が、日本人向けに豆板醤の辛さをケチャップでマイルドにしたことで誕生しました。

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エビチリは中華料理ではない? その誤解と真実、そしてエビチリの魅力

エビチリ。プリプリのエビを甘辛いチリソースで炒めた、食欲をそそるあの料理。中華料理の定番として、多くの人が疑うことなく認識しているのではないでしょうか。しかし、意外にもエビチリは、純粋な中華料理ではないのです。

冒頭にもあるように、エビチリは日本で生まれました。その発祥は、1950年代に東京・新橋にあった四川飯店。四川料理の父と呼ばれる陳建民氏が、日本人にも親しみやすい四川料理を追求する中で生み出したのがエビチリなのです。

本場四川料理の代表格である麻婆豆腐も、陳建民氏によって日本人の口に合うようにアレンジされたことは有名です。しかし、麻婆豆腐はあくまで四川料理をベースとしています。一方、エビチリは、四川料理の「乾焼蝦仁(カンシャオシャーレン)」というエビのチリソース炒めをヒントにしていますが、その味付けや調理法は大きく異なります。

乾焼蝦仁は、豆板醤をベースとした本格的な辛さが特徴です。しかし、陳建民氏は、当時日本人がまだ辛さに慣れていないことを考慮し、豆板醤の量を減らし、代わりにケチャップを加えて甘みと酸味をプラスしました。さらに、とろみをつけるために片栗粉を使用するなど、日本人好みの味に大きくアレンジしたのです。

つまり、エビチリは、乾焼蝦仁を参考にしながらも、日本人向けに新たに開発された、日本独自の料理と言えるでしょう。

では、なぜエビチリは中華料理として認識されるようになったのでしょうか?

その理由はいくつか考えられます。まず、四川飯店という中華料理店で生まれたこと。そして、乾焼蝦仁という中華料理をベースにしていること。さらに、中華鍋を使って調理されることや、一般的に中華料理店で提供されることが多いことなどが挙げられます。これらの要素が複合的に作用し、エビチリは中華料理というイメージを確立していったと考えられます。

エビチリが中華料理であるかどうかという議論はさておき、エビチリの魅力は、その甘辛い絶妙なバランスにあります。プリプリのエビの食感、ピリ辛のチリソース、そしてご飯が進む甘み。老若男女問わず愛される、まさに国民的な料理と言えるでしょう。

エビチリは、本場の中華料理とは異なる、日本生まれの独自の進化を遂げた料理です。その背景を知ることで、エビチリをより深く味わうことができるのではないでしょうか。今度エビチリを食べる際には、そのルーツに思いを馳せながら、その美味しさを堪能してみてください。

そして、もし機会があれば、本場の乾焼蝦仁を試してみて、エビチリとの違いを味わってみるのも面白いかもしれません。それぞれの魅力に触れることで、中華料理、そしてエビチリという料理の世界がさらに広がるはずです。