カウンター席の上座はどこですか？

カウンター席の上座、その位置はどこ？

飲食店における席次、特にカウンター席の上座は、店によって異なり、その基準は多様である。単純に入り口から遠い席が上座とは限らないのだ。 「上座」という概念は、客観的なルールに基づくものではなく、店独自の慣習や、店主の配慮、さらにはお客様との接し方によって柔軟に変わる、いわば「暗黙の了解」のようなものであると言えるだろう。

多くの場合、入り口から遠い席が上座として扱われるのは、確かに一般的な傾向である。入り口に近い席は、スタッフとのコミュニケーションや、他の客との出会いにおいて、自然と視線や距離が近くなる。一方、入り口から遠い席は、よりプライベートな空間を提供し、店主や他の客との距離感を保ちながら、ゆっくりと食事やお酒を楽しむことができる。この意味で、距離感とプライバシーを重視する上座の概念に繋がりやすい。

しかし、カウンター席においては、この単純な「入り口から遠い」という基準だけでは不十分である。寿司屋やバー、そして一部の居酒屋など、接客スタイルが異なる店舗では、カウンター席の上座は、店主や料理人、バーテンダーの正面の席と一致するケースが多い。

この理由は、これらの店舗では、料理やドリンクを作る、または客と直接的なやり取りをするスタッフとの距離が重要な要素となるからである。目の前にスタッフがいて、調理や提供の過程を間近で見ることができるという特別な体験が、顧客体験の一部として認識されているためである。 また、カウンター席における上座は、店主が顧客に特別な配慮を注ぐ機会を意味することがある。特別な料理への配慮、あるいはちょっとした気遣いを伝えるなど、店主の意図が伝わる場面も多いだろう。

カウンター席の上座の決定要因は、店によって様々である。例えば、寿司屋では、大将の目の前が最も重要な席と認識され、そこで料理を目の当たりにすることで、食材への敬意や技術を直接体感できる。バーでは、バーテンダーの目の前が上座として扱われることが多い。バーテンダーとの間で、料理や飲み物に対する会話や、バーテンダーの技術を直接見ることができる、という経験価値を高めるためであろう。

さらに、カウンター席は、店の雰囲気やコンセプトによっても異なる。 落ち着いた雰囲気の店では、入り口から遠い席を上座と考える一方、活気のある店では、店主や他の客との距離がそれほど重要でなく、むしろ、店全体の流れの中で自分たちがどのあたりにいるのかがより重視される。そのような店では、客の動線や会話の中心となる位置に上座が置かれることもある。

重要なのは、カウンター席の上座に特別な意味合いを持たせることにより、その店の独自性や文化を醸し出すことだ。客は、上座の席に座ることで、その店で過ごした時間全体に特別な意味付けを見出せる。上座の位置を知ることで、お客様は、店主や他の客との関係性、あるいは店全体の雰囲気をより深く理解し、より良い経験を得ることができるだろう。

したがって、カウンター席の上座は、店の雰囲気、スタッフとの接し方、そして顧客とのインタラクションの仕方に深く関係している、柔軟で複雑な概念であると言える。 客は、お店に入るときに、このような暗黙の了解を事前に理解することはできない。 しかし、それらを理解することで、カウンター席に座る上でのより良い経験をすることができるだろう。 それは、店側の配慮や気遣いが、顧客体験を豊かにしている証でもあると言えるだろう。