台所は古い言い方だと何と言いますか？

台所は昔、何と言った？「台盤所」から紐解く台所の変遷

現代の生活に欠かせない空間である台所。料理を作り、食事をするだけでなく、家族や仲間が集まるコミュニケーションの場としても重要な役割を果たしています。そんな台所ですが、昔はどのような名前で呼ばれていたのでしょうか？この記事では、平安時代の貴族の住まいで使われていた「台盤所（だいばんしょ）」という言葉を軸に、台所の呼び名の変遷を辿ります。

平安時代の貴族の邸宅、いわゆる「寝殿造」において、食事を調理し、準備する場所は「台盤所」と呼ばれていました。貴族の食事は、現在の私たちが想像するよりも遥かに格式高く、複雑な儀式を伴っていました。そのため、台盤所は単なる調理場ではなく、食材の管理から調理、配膳まで、食事に関する全ての工程を担う、非常に重要な場所だったのです。

「台盤」とは、料理を盛り付けるための台のことで、この台を準備する場所、つまり料理を準備する場所という意味で「台盤所」という名前がつけられました。現代のキッチンとは異なり、台盤所は独立した建物として存在し、複数の人が働いていたと考えられています。

平安時代以降、時代が下るにつれて、台所の呼び名も変化していきます。鎌倉時代以降には、「厨（くりや）」という言葉が使われるようになります。「厨」は、もともと神聖な場所を指す言葉でしたが、次第に食事を作る場所という意味合いも持つようになり、台所を指す言葉として定着していきました。

江戸時代になると、「厨房（ちゅうぼう）」という言葉も登場します。これは、禅寺の台所を指す言葉が一般化したもので、特に規模の大きな、専門的な調理を行う場所を指すことが多いようです。

また、庶民の間では「勝手（かって）」という言葉も使われていました。「勝手」は、自分勝手、都合が良いという意味合いで使われることが多い言葉ですが、台所という、家の中でも特に自由に使える場所、という意味合いから、台所を指す言葉として使われるようになったと考えられます。

そして現代では、「キッチン」という言葉が広く使われています。これは英語の”kitchen”から来た外来語で、特に西洋風の調理設備を備えた台所を指すことが多いです。

このように、台所は時代や社会の変化に合わせて、様々な名前で呼ばれてきました。「台盤所」という古語は、その歴史の始まりを物語る、貴重な言葉と言えるでしょう。台所の呼び名を通して、日本の食文化や生活様式の変遷を垣間見ることができるのです。

現代の私たちは、当たり前のようにキッチンを使っていますが、そのルーツを辿ることで、食に対する感謝の気持ちや、先人たちの知恵に触れることができるかもしれません。今夜の夕食を作る際には、その台所の名前の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。