医者の不人気な科は？

医師不足の影：不人気診療科が抱える苦悩と、その打開策

医師不足が叫ばれて久しい昨今、特に深刻な状況にあるのが、一般的に「不人気」と呼ばれる診療科です。インターネット上で多く見られる情報は、泌尿器科、肛門科、精神科を例に挙げ、その理由を「患者との距離の近さ」「デリケートな症状への対応」「社会的な偏見」といった表面的なものに留めています。しかし、これらの診療科が抱える問題は、より深く、構造的なものなのです。

まず、泌尿器科・肛門科は、文字通り排泄に関わる部位を扱うため、患者自身が受診をためらう傾向にあります。加えて、これらの診療科は、直接的な生命に関わる緊急性の高い疾患よりも、QOL（生活の質）を著しく低下させる慢性的な疾患を扱うことが多いのが特徴です。例えば、頻尿、尿漏れ、痔といった症状は、放置すれば日常生活に支障をきたしますが、「命に関わるわけではない」と自己判断し、受診を遅らせる患者も少なくありません。結果として、医師は軽微な症状の段階での早期発見・治療を困難にし、重症化してから対応せざるを得ない状況に陥りがちです。これは医師の負担を増大させ、診療科全体の疲弊につながります。

一方、精神科は、他の診療科とは異質の難しさを抱えています。精神疾患は、目に見える病変が少なく、診断が難航することがあります。患者とのコミュニケーションを通して症状を把握し、丁寧な問診を重ねる必要があるため、診療には時間と労力がかかります。さらに、近年増加傾向にある発達障害や、複雑な背景を持つ患者への対応は、専門的な知識と経験を必要とします。また、精神科医は、患者の自殺リスクや、他者への攻撃性といった、他の診療科ではあまり直面しない問題にも対応する必要があります。これらの精神的な負担は、精神科医自身のメンタルヘルスを脅かし、離職率を高める要因となっています。

では、これらの「不人気診療科」が抱える問題を解決するためには、どのような対策が必要なのでしょうか？

1. 啓発活動の強化: 泌尿器科・肛門科に関しては、病気の早期発見・早期治療の重要性を啓発し、受診へのハードルを下げる必要があります。テレビCMやインターネット広告だけでなく、自治体と連携した健康診断の実施や、学校教育における性教育の充実なども有効です。

2. プライバシーへの配慮: 受診をためらう理由の一つに、プライバシーへの不安があります。泌尿器科・肛門科の待合室の構造を見直し、他の患者と顔を合わせにくいようにする、診察室内の会話が外に漏れないようにするなど、プライバシーへの配慮を徹底することが重要です。

3. 精神科医療への理解促進: 精神疾患に対する偏見をなくすための啓発活動は不可欠です。学校教育や職場研修などを通して、精神疾患に関する正しい知識を普及させることが重要です。また、精神科医の負担を軽減するため、多職種連携を強化し、ソーシャルワーカーや臨床心理士などの専門職が、より積極的に患者の支援に関わる体制を構築する必要があります。

4. 処遇改善: どの診療科にも共通して言えることですが、医師の過酷な労働環境を改善し、十分な報酬を与えることが重要です。特に、不人気診療科においては、医師のモチベーションを維持し、人材を確保するために、より積極的な処遇改善が求められます。

医師不足は、医療崩壊につながる深刻な問題です。特に、不人気診療科の問題は、放置すればさらに深刻化し、国民の健康を損なう可能性があります。今こそ、根本的な原因を見つめ直し、具体的な対策を講じる必要があります。