「～ますでしょうか」は正しい敬語ですか？

「～ますでしょうか」は正しい敬語表現か？

日本語の敬語は、状況や相手への配慮を綿密に表現する複雑なシステムです。その中で、「～ますでしょうか」は、一見二重敬語のように見える表現ですが、実は適切な敬語であり、二重敬語ではないとされる場合もあります。この表現の正しさ・適切さを理解するためには、「ます」と「でしょうか」それぞれの役割を考察する必要があります。

「～ます」は、動詞に付く丁寧な語尾です。話し手は、これによって相手に対して尊敬や謙譲の意図を伝え、丁寧な印象を与えます。例えば、「行きます」を「行きますか」と変更するだけで、相手への敬意の度合いが大きく変化します。この「ます」自体は、敬意を示すための重要な要素です。

一方、「でしょうか」は、「だろうか」の丁寧な言い方です。疑問を表す助動詞「か」に丁寧な接尾辞「でしょう」が付いた形です。この「でしょうか」は、話し手が相手に疑問を投げかける際の丁寧な表現となります。相手への気遣いを示す効果を持ちます。

「～ますでしょうか」という組み合わせは、「～ます」の丁寧さをさらに強調する役割を果たすと言えます。「～ます」で丁寧な表現をした上で、「でしょうか」で「～ます」の丁寧さを裏付けるように疑問の意図を含めることで、さらに丁寧な印象を与えます。「～ます」で充分な丁寧さを感じさせる表現に、より丁寧な疑問のニュアンスを加えていると考えられます。

例えば、「資料は明日までに完成しますでしょうか」という表現を考えてみましょう。「資料は明日までに完成します」という表現は既に丁寧ですが、「～でしょうか」をつけることで、より丁寧で、相手の負担や都合を気にかけながら、完成を期待するニュアンスを含んでいます。相手は、この表現から、話し手の配慮と、依頼の誠実さを感じ取ることができ、より好印象を受けるでしょう。

しかし、全ての状況で「～ますでしょうか」が適切とは限りません。例えば、命令的なニュアンスを含んだ質問や、非常にフォーマルな場面では、より簡潔で直接的な表現の方が良い場合があります。また、既に十分に丁寧な表現をしている場合、過剰な丁寧さがかえって不自然になる可能性もあります。

「～ますでしょうか」は、適切な状況においては、非常に効果的な丁寧な表現です。しかし、単に「ます」をつけるだけでは不十分な状況において、丁寧さをより強調したい際に効果を発揮します。相手の立場を考え、適切な言葉を選ぶことが重要であり、「～ますでしょうか」もその選択肢の一つであると言えるでしょう。

つまり、「～ますでしょうか」が二重敬語であるか否かというより、その表現が適切か不適切かは、文脈と状況次第であると言えます。丁寧さを求める場面で、この表現を用いることは有効ですが、過剰な敬語はかえって不自然な印象を与えてしまう可能性があることを認識する必要があります。

これらの点を踏まえ、「～ますでしょうか」は、適切な状況であれば正しい敬語表現であると言えるでしょう。しかし、その使用は慎重を要し、文脈や状況に合わせた判断が必要です。