定期券は賃金になる?

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通勤定期券を現物支給する場合、原則として労働基準法の「通貨払いの原則」に抵触します。ただし、就業規則等で支給基準が明確に定められており、通勤交通費が賃金とみなされる場合は、例外的に認められるケースもあります。詳細は専門家へのご相談をおすすめします。

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通勤定期券、それは多くの会社員にとって毎日の生活に欠かせない存在です。しかし、この通勤定期券、実は賃金の一部とみなせるのか、という点について、法的にも、実務的にも複雑な問題が潜んでいます。この記事では、通勤定期券が賃金に該当するかどうかを多角的に考察し、そのグレーゾーンを明らかにします。

まず、日本の労働基準法は「通貨払いの原則」を定めています。これは、賃金は原則として現金で支払われるべきという原則です。通勤定期券は現物支給であり、この原則に反する可能性が高いと言えるでしょう。現金で支給される賃金とは異なり、定期券は自由に使えるお金ではないため、労働者の経済的自由を制限する側面があります。例えば、定期券の経路変更が必要になった場合、会社に申請し承認を得る必要が生じ、個人の自由な意思決定を阻害する可能性があるのです。

しかし、現実には多くの企業が通勤定期券を現物支給しています。これは、企業側にとって、従業員の通勤経路を把握しやすく、経費管理が容易になるというメリットがあるためです。また、従業員にとっても、現金で通勤費を支給されるよりも、定期券の利用の方が便利で、経費精算の手間が省けるという利点があります。

では、どのような場合に通勤定期券が賃金とみなされるのでしょうか? 重要なのは、会社と従業員の間で、通勤定期券が賃金の一部として明確に合意されているか、そしてそれが就業規則などに明記されているかです。例えば、「通勤定期券を支給する代わりに、給与の一部を控除する」といった場合、定期券は賃金の一部とみなされる可能性が高いです。また、定期券の支給額が、実際の通勤費用を大幅に上回る場合も、賃金の一部と解釈される可能性があります。

さらに、定期券支給に関するルールが曖昧であったり、従業員への説明が不十分な場合、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります。これは、会社にとって大きなリスクとなります。例えば、就業規則に「通勤定期券の支給は賃金とはみなさない」と明記していても、実際の運用がその記述と異なっていたり、従業員にその旨が適切に伝えられていない場合、法律に抵触する可能性があります。

結論として、通勤定期券が賃金に該当するかどうかは、ケースバイケースで判断する必要があります。 会社と従業員間の合意、就業規則への明記、支給額の妥当性など、様々な要素を総合的に考慮する必要があります。 特に、グレーゾーンに該当する場合は、労働基準監督署への相談や、弁護士などの専門家への相談が不可欠です。 曖昧なまま運用を続けることは、会社にとっても従業員にとってもリスクが伴うため、明確な基準を設けることが非常に重要です。

定期券の支給は、従業員の福利厚生の一環として捉えられる側面もありますが、労働基準法の原則と、個々の状況を慎重に検討することが必要です。 安易な判断は、法的なトラブルに繋がりかねませんので、常に最新の法律知識に基づいた対応を心がけるべきでしょう。 企業は、透明性の高い制度設計と従業員への丁寧な説明を行うことで、このようなトラブルを回避することが可能です。