なぜ さつま揚げという？

なぜ「さつま揚げ」という？その由来と全国への広がり

スーパーのお惣菜コーナーや、おでんの具材としておなじみの「さつま揚げ」。一口食べると、魚の旨味がじゅわっと広がり、素朴ながらも奥深い味わいが楽しめます。しかし、ふと疑問に思うことはありませんか？なぜ「さつま揚げ」という名前なのでしょうか？

冒頭で触れられているように、そのルーツは中国料理にあるという説が有力です。中国には「チキアギ（炸魚）」という、魚のすり身を揚げた料理が存在します。これが琉球を経て薩摩（現在の鹿児島県）に伝わり、「つけあげ」という名前で親しまれるようになったと言われています。

ここで注目すべきは「つけあげ」という名前です。揚げ物であることから「揚げ」であることは想像に難くありませんが、「つけ」とは一体何を意味するのでしょうか？これには諸説ありますが、有力なのは「醤油につけて食べる」習慣から来ているという説です。揚げたてのアツアツを醤油につけて食べる、想像するだけで食欲がそそられますね。

さて、薩摩地方で「つけあげ」として親しまれていたこの料理が、なぜ「さつま揚げ」という名前で全国に広まったのでしょうか？

その背景には、明治時代の廃藩置県が関係しています。薩摩藩が廃止され、鹿児島県となったことで、県外との交流が活発化。鹿児島出身の人々が各地に移住する際に、故郷の味である「つけあげ」を広めたと考えられています。

この時、「つけあげ」という名前では、どこの郷土料理か分かりにくいため、出身地である「薩摩」を冠して「さつま揚げ」と呼ぶようになったのでしょう。つまり、「さつま揚げ」という名前は、薩摩地方の料理であることを明確にするためのブランディングだったと言えるかもしれません。

さらに、さつま揚げが全国的に普及した背景には、その保存性と多様な調理方法も大きく影響しています。揚げ物であるため比較的日持ちが良く、冷蔵技術が発達していなかった時代でも重宝されました。また、そのまま食べるだけでなく、煮物、炒め物、おでんなど、様々な料理に活用できる汎用性の高さも、広く受け入れられた理由の一つでしょう。

現在では、さつま揚げは地域によってさまざまな種類が存在します。ゴボウやイカなどの具材が入ったもの、甘めの味付けのもの、ピリ辛のものなど、バラエティ豊かなラインナップが楽しめます。

もし、次にさつま揚げを口にする機会があれば、その名前の由来や歴史に思いを馳せてみてください。薩摩の風土と、先人たちの知恵が詰まった、奥深い味わいをより一層楽しめるはずです。