事実婚で困ることは何ですか?

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事実婚では、配偶者に相続権が認められません。これは、たとえ夫婦が長年一緒に暮らしていても、法律上は他人とみなされるためです。財産を残すには遺言書が必要ですが、家族が関係する場合は、相続争いに発展する可能性があります。

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事実婚、つまり婚姻届を提出せずに事実上夫婦として生活するカップルの増加は、近年目立っています。自由な関係を望む人や、宗教上の理由、あるいは経済的な事情など、様々な理由から事実婚を選択する人がいます。しかし、その一方で、事実婚は法的な保護を受けられないため、様々な困難に直面する可能性があります。婚姻届を出さないことで、一体どのような問題が発生するのでしょうか。

まず、最も大きな問題として挙げられるのは、相続問題です。冒頭でも触れたように、事実婚の配偶者には、法律上、相続権がありません。たとえ長年連れ添い、共同で財産を築き上げてきたとしても、法的には他人であるため、配偶者側は相続人として認められず、財産の相続はできません。仮に、遺言書で配偶者に財産を相続させるように指定していても、遺言の内容に異議を唱える相続人が存在した場合、複雑な相続争いに発展する可能性があります。特に、故人の親族が遺言の内容に納得しない場合は、裁判沙汰にまで発展するリスクも高く、精神的にも経済的にも大きな負担を強いられることになります。

次に、医療に関する問題です。配偶者が病気や怪我で入院した場合、婚姻関係にある夫婦であれば、配偶者は容易に患者の情報を取得し、治療に関する決定に関与できます。しかし、事実婚の場合、患者の同意がない限り、医療関係者は配偶者に対して病状や治療内容に関する情報を提供することを制限される場合があります。緊急時においても、意思決定の過程で困難が生じる可能性があり、迅速な対応が遅れるリスクがあります。特に意識不明の状態など、本人の意思確認ができない状況では、判断に苦慮することが予想されます。

さらに、経済的な問題も無視できません。婚姻届を提出していないため、配偶者控除などの税制上の優遇措置を受けることができません。これは、毎年の税負担の増加を意味し、経済的な負担が大きくなります。また、配偶者が病気や怪我で働けなくなった場合、生活保護などの公的支援を受ける際にも、事実婚であることが不利に働く可能性があります。

事実婚は、個人の自由な選択として尊重されるべきですが、その選択がもたらす法的リスクについても、十分に認識しておく必要があります。例えば、共同で住宅を購入した場合、一方の死亡により住宅ローンが残った場合、残された配偶者は多額の借金を背負うことになります。また、育児や介護に関しても、法的な保護が不足しているため、困難に直面する可能性が高いです。

これらの問題を回避するためには、パートナーシップ協定を締結したり、遺言書を作成したり、財産分与に関する契約書を交わしたりすることが考えられます。しかし、これらの書類はあくまで私的な契約であり、法的拘束力には限界があります。そのため、事実婚を選択する際には、それぞれの状況を踏まえた上で、メリットとデメリットを十分に理解し、法的リスクを最小限に抑えるための対策をしっかりと講じる必要があります。専門家のアドバイスを受けることも、賢明な選択と言えるでしょう。最終的には、事実婚という選択が、自分たちにとって本当に最適な選択であるかどうかを、慎重に検討することが重要です。