右折する時は必ず徐行しなくてはいけませんか？

右折時、必ず徐行しなければならないのか？という問いは、一見単純そうに見えますが、実際には道路状況、交通状況、法令解釈など、様々な要素が絡み合い、単純なイエス・ノーでは答えられない複雑な問題です。道路交通法は「徐行」を義務付けるものの、その具体的な速度を規定していません。そのため、状況に応じた適切な速度を判断することが、安全な運転、そして法令遵守に繋がるのです。

まず、道路交通法第34条には「交差点等においては、当該交差点等に進入するとき及び当該交差点等内を通過するときは、徐行しなければならない」と明記されています。この「徐行」は、周囲の状況を十分に把握し、いつでも停止できる速度で走行することを意味します。決して、時速5kmや10kmといった具体的な数値で規定されているわけではありません。 そのため、交通量の少ない住宅街の小さな交差点と、交通量の多い主要道路の交差点では、求められる「徐行」の速度は大きく異なるでしょう。前者では、時速10km程度でも許容範囲内と言える場合もあるかもしれませんが、後者では時速5km以下、場合によっては完全に停止してから発進する必要があるかもしれません。

右折時の徐行義務は、特に以下の状況で重要性を増します。

• 歩行者や自転車の通行が多い場合: 歩行者や自転車は、車よりも視覚的に不利な立場にあります。右折車両は、彼らの存在を容易に見落としてしまう可能性が高いため、十分な徐行と注意深い観察が不可欠です。特に、交差点に設置された横断歩道や自転車横断帯がある場合、歩行者・自転車が通行中であれば、完全に停止して通行を優先させるべきです。

• 視界不良の場合: 雨、霧、雪、夜間など、視界が悪い状況では、より慎重な徐行が必要です。対向車や歩行者の発見が遅れる可能性が高いため、安全に右折するためには、極端に速度を落とす必要があるでしょう。

• 対向車線の交通量が多い場合: 対向車線の交通量が非常に多い場合、右折のために一時停止する必要があるかもしれません。無理に右折を試みて、対向車と衝突するリスクを負うよりは、安全を優先すべきです。

• 道路標識や信号機による指示がある場合: 道路標識や信号機に、速度制限や一時停止の指示があれば、それに従うことが最優先です。徐行義務を満たすだけでなく、法令違反を避けるためにも、指示に従う必要があります。

さらに、右折時は、原則として道路の中央線寄りを走行し、交差点の中心にできるだけ近い内側を通過することが推奨されています。これは、対向車線からの視認性を高め、事故リスクを低減するためです。しかし、これも絶対的なものではなく、道路状況や交通状況によっては、多少ずれることもあるでしょう。

結局のところ、「右折時は必ず徐行しなければならない」という問いへの答えは、「状況次第」となります。法令遵守と安全運転を両立させるためには、単なる速度制限ではなく、周囲の状況を常に的確に判断し、適切な速度で走行することが求められます。安全な運転は、個々のドライバーの責任と判断にかかっていることを忘れてはならないでしょう。