「承知しております」は二重敬語ですか?

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「承知いたしました」は二重敬語ではありません。「承知」は謙譲語ではなく、丁寧な表現です。「いたしました」は謙譲語ですが、「承知」が謙譲語でないため、二重敬語とはなりません。「拝見させていただきました」のような、謙譲語を重複させた表現とは異なるのです。 よって、「承知いたしました」は適切な丁寧語です。

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「承知しております」は二重敬語か?という問いは、日本語学習者だけでなく、ビジネスシーンにおいても頻繁に議論されるテーマです。結論から言うと、一般的には「二重敬語」と判断されるケースが多いものの、必ずしもそうとは言い切れない、微妙なニュアンスを含む表現です。この記事では、その理由を様々な角度から深掘りし、より正確な理解を目指します。

まず、問題となるのは「承知」と「おります」のそれぞれの性質です。「承知」は、相手からの依頼や指示を理解し、受け入れたことを示す言葉です。しかし、これが謙譲語であるか否かについては議論の余地があります。辞書によっては謙譲語として分類していないものも多く、むしろ丁寧な表現として捉えるのが一般的です。「承知しました」という言い回しからも分かるように、それ自体に謙遜のニュアンスは弱く、単に丁寧な言葉遣いとして機能していると言えるでしょう。

一方、「おります」は、謙譲語の代表格です。「います」の謙譲語形であり、話者自身の謙遜の意を表します。相手への配慮を示す、非常に丁寧な表現です。

では、なぜ「承知しております」が二重敬語と判断されることが多いのでしょうか?それは、「おります」という強い謙譲語を、謙譲語ではない(もしくは弱くしか謙譲語ではない)「承知」に付けることで、過剰な丁寧さ、つまり「二重敬語」と捉えられやすいからです。「承知しました」で十分に丁寧な表現なのに、「おります」をつけることで、かえって不自然で、相手に「わざとらしい」印象を与えてしまう可能性があるのです。

しかし、状況によっては「承知しております」が適切な表現となる場合もあります。例えば、非常に目上の方、もしくは特別な敬意を払うべき相手に対しては、「承知しました」では丁寧さが不足すると感じるかもしれません。そのような状況では、「承知しております」を用いることで、より深い敬意を表すことができるのです。

「承知いたしました」との比較も重要です。「いたしました」も謙譲語ですが、「おります」よりもやや弱い謙譲語であると考えることができます。そのため、「承知いたしました」は「承知しております」よりも自然で、ビジネスシーンでも広く受け入れられています。

結局、「承知しております」が二重敬語かどうかは、文脈、相手との関係性、そして個人の感覚に依存します。絶対的な正解はなく、状況に応じて適切な表現を選ぶことが重要です。より自然で、相手に不快感を与えないよう、丁寧さだけでなく、言葉の持つニュアンスを理解した上で表現を選ぶべきです。安全策として、「承知いたしました」を使う方が、多くの場面で無難でしょう。しかし、状況に応じて「承知しております」を用いることも、決して間違いとは言い切れません。大切なのは、言葉の裏に潜む意味を理解し、相手への配慮を忘れずにコミュニケーションをとることです。 完璧な日本語の習得は難しい道のりですが、このように言葉一つ一つを丁寧に検討することで、より円滑なコミュニケーションを実現できるでしょう。